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村上春樹全作品 1979~1989〈2〉 羊をめぐる冒険

村上春樹全作品 1979~1989〈2〉 羊をめぐる冒険

村上春樹全作品 1979~1989〈2〉 羊をめぐる冒険

作家
村上春樹
出版社
講談社
発売日
1990-07-17
ISBN
9784061879324
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村上春樹全作品 1979~1989〈2〉 羊をめぐる冒険 / 感想・レビュー

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踊る猫

いまの言葉で言えば「陰謀論」的な、自分とは遠く離れた次元に存在しているはずのとある特定の個人(あるいは団体)こそが自分たちの暮らしそのものを牛耳っているという展開が物語として語られる。そして、その完全に「弄ばれる」状況下において主人公は自分のためだけに出されたテストに答えるかのように、あるいはRPG的につぎつぎと繰り出されるミッションに答えていくことで謎解きに迫っていく。その「世界が小出しにするテストを解くことで核心に近づく」という構図はもちろん、後の春樹作品が十八番とする展開でありここにその萌芽が見える

2024/10/21

踊る猫

村上春樹はこの記念すべき初期の長編において、一方では陰謀論の領域にまで踏み込み、その一方で北海道の歴史や現在にまで切り込んでフェイク/イマジネーションとリアルを「巧み」にミックスする手法を自家薬籠中のものにしたようだ。だからここで語られるストーリーはとても「巧い」。そしてその奥から浮き上がってくる、人間が持つ本質的にウェットな弱さを見据える姿勢にもあらためて唸らされる。だから悪く言えば(他の春樹の作品にも言いうることとも思うが)ストーリーに奉仕する「コマ」以上のものとして人物がせり上がらないのが気になった

2024/03/31

踊る猫

春樹の初期作品を読み返していて感じるのは、それまであった断章形式の語り口が次第に滑らかさを得て、骨太な「物語」へと変化(進化/深化)していくことだ。今回の読書経験を経て確かにウェルメイドなストーリーであることを確認し、同時にこの物語は結局のところ黒幕的存在(ある種のカリスマ)に自分が翻弄されていると読み、そこから反撃して終わるという構造から成り立っているとも読んだ。ならばそれは後の『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』にも通じるものであり、下手すると陰謀論めいた与太話としても読めてしまうのではないかとも思う

2022/09/28

tom

〈1〉と同じくサラサラと読了。村上小説は、どうしてこんなふうにサラサラと読めるのか、文体のせいだとは思うのだけど、読み返すたびに不思議に思う。内容は、それなりに複雑なもの。そして、村上らしく、ときどき話がジャンプする。詳細が語られないから、このジャンプに「分けわからぬ」と困ってしまう読者は多いだろうとも思う。その後の村上さんの書く長編は、この本に現れた出来事を、できるだけ詳細に語ろうとするものなのかもしれない。とりあえず、面白く読了でした。

2022/05/20

春ドーナツ

文庫版を読み終えると、全集版を手に取った。初めての立て続け読書。そこには一抹の不安があった。けれども雲ひとつない夏空のように、そこには退屈の影は微塵もなかった。もしかしたら「たったっ楽しい」と口笛を吹きながらページをめくっていたかも知れない(先日のラジオ番組の影響だ)。いつもの再読と同じじゃないかと思う。というか、最初の再読のニュアンスが思い出せないので、十把一絡げになっているような気がする。純粋性が失われている。どうしよう? 玉置浩二さんが「あの頃」に帰りたいと切実に唄っているけれど、デロリアンはない。

2020/04/29

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