村上春樹全作品 1979~1989〈7〉 ダンス・ダンス・ダンス
村上春樹全作品 1979~1989〈7〉 ダンス・ダンス・ダンス / 感想・レビュー
tom
再読。いつものことだけど、記憶は闇の中。それも真っ黒で何も見えない。よって、どこにたどり着くのかと、ワクワクしながら読み続ける。「羊をめぐる」から引き続いて、主人公の周りでは人が死んでいく。はっきりしないが、どこかに行ってしまう。主人公は、自分がどうなっていくのかといたたまれない気持ちの中で、生き延びることを願うという。これはエンタメ・ファンタジーなのかそれとも哲学めいた問いかけをしようとしているのか、どちらなのだと思いながら読み続けた。答えは分からないけれど、結末に至るまで楽しんで読んだ物語でした。
2022/09/11
踊る猫
喪失と再生。村上春樹はこのテーマに拘泥して小説を書いている印象があるが、ある意味ではもっともはっきりとそのテーマを打ち出しているのがこの作品なのかもしれない(何ならそこに「成長」を付け加えてもいい)。改めて読み返すとぜんぜんヤマもオチもない話なのに物語としてのドライブ感は巧みで、ついつい読み耽ってしまう。誰に感情移入して読むかはむろん人それぞれだが、私はユキという少女と主人公の交流に惹かれた。ヴィム・ヴェンダースの映画を彷彿とさせる繊細な交流と彼女たちの成長/成熟に、私もまた自分自身の成長を考えさせられた
2022/10/08
春ドーナツ
「ベッドの中で本を読んでいると四時にドアにノックの音がした。開けると彼女(ユミヨシさん)が立っていた。眼鏡をかけて、ライト・ブルーのブレザー・コートを着たフロントの女の子だった。彼女は少しだけ開いたドアの隙間からひらべったい影のようにするりと部屋の中に入って素早くドアを閉めた。『こんなところみつかったら、私クビになっちゃうのよ。ここのホテルってそういうことにすごく厳しいんだから』と彼女は言った。」(106-7頁)後半部分を書き写す余裕がないのは残念だ。スカーレット・ヨハンソンに演じてもらいたいなと思う。
2020/05/13
serene
『風の歌を聴け』 から始まった物語の完結編になるのかな? 『羊をめぐる冒険』 までの三作における物語全体にただよう哀しみや喪失感が、 本作ではずいぶん薄らいでいるように感じられました。 かわりに、主人公の決意や自信とも言えるものが、少しずつ強くなってゆく様子が窺えました。 失い、傷つき、迷い迷って、そして彼はようやく見つけたのですね、自分のいるところを。
2012/04/12
@かおり
羊をめぐる冒険の続編。前作で全てを失った僕は、591ページの後に居場所をきちんと手に入れた。村上さんの作品の多くでは主人公は(どんなに女の人と関係を持ったとしても)ひとり、だなぁと感じさせられていたけれど、本作では感じなかったな。あっちこっち行って色んな人に逢って色んなものを観て聞いて食べて、本当に「一回りして」帰ってきた感じ。やれやれ。
2014/07/01
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