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熊野集 (講談社文芸文庫 なA 1)

熊野集 (講談社文芸文庫 なA 1)

熊野集 (講談社文芸文庫 なA 1)

作家
中上健次
川村二郎
出版社
講談社
発売日
1988-01-27
ISBN
9784061960114
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熊野集 (講談社文芸文庫 なA 1) / 感想・レビュー

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ハチアカデミー

古典的な世界を描く物語と、近現代が舞台となる小説、熊野・新宮近郊で生活する作家の私小説がまじりあった短編集。総体として、熊野という場所を感じさせる。私小説ものでは、新宮出身で大逆事件で殺された大石誠之助の末裔が路地を騙し、破壊しようとしていることへの恨み辛みなど、「熊野/新宮」に対するアンビバレントな感情が表出されている。路地の現実や小説作品創作の背景を見せつつも、文体と感情表現が強烈で印象に残る。被慈利(ひじり)を描く「不死」「月と不死」の連作、そしてヒューマニズムを痛烈に批判するラストの「鴉」も良い。

2015/02/04

YO)))

重く濃くねっとりとしてそれでいてしつこい民族ヘヴィ・メタル文学,なのはいつもどおりだが,少しく異質な短編集ではある.鏡花「高野聖」の淫靡な変奏といった趣の巻頭「不死」のような時代がかったフィクションと,作家の見た紀州,新宮,路地について書かれたエッセイとも私小説ともつかない諸作が混在している.が,決して単なるオムニバスなどではなく,『物語の走狗』を自認し,自らの身をその内奥に投じてでもそれを書ききらんとする作家の物語への執念が,全体を一つの円環の如く纏め上げている.或いは「中上曼荼羅」か.

2012/10/25

nina

半年ほど続いたアメリカでの生活を切り上げ、生まれ育った新宮の「路地」に舞い戻った中上が1980年代初頭に書き綴った短篇集。その頃その場所で、中上が小説の中で生み育んできた「路地」と、彼が生まれ育った現実の「路地」との齟齬が浮き彫りになり、ノスタルジーと一言で片付けられない大きな波に襲われたのだろうか、中上自身の感情の軌跡が綴られたエッセイ風の文章からは「秋幸サーガ」三部作の主人公秋幸と重なりつつもまた別の陰影が透けて見える。熊野の森を舞台にした短篇集『化粧』に連なる幻想的な短篇との組み合わせが面白い。

2014/08/16

たびねこ

噛み切れない、呑み込めない、絡みつく言葉と格闘しながら、読み進む。「路地」をめぐる血と業、魔界を内に抱えた熊野の多雨で湿った歴史的風土、なんとも重苦しい。ところが、だからこそ、思わずはっとするような(美しい?)場面にも遭遇する。

2015/01/27

mim42

熊野関係の小品集。虚構の形式を採るものが多いがその殆どが現実あるいは私小説と呼べそうだ。私は中上のこの部分を西村賢太的面として勝手分類している。虚構色の強そうな「葺き籠り」が良かった。菊雄=秋幸と重ねずにはいられない。懲役お務め直前頃だろうか。 全体的に金太郎飴で習作感すら漂う。先日実際に新宮の街を歩いたので、スーパーマーケット「オークワ」や路地の再開発、大逆事件、玉置、浮島等のキーワードに反応した。また、街歩き中に「中上組」なる土建業者?の事務所を見つけてもしやと思ったことを思い出したり。

2024/10/27

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