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暗室 (講談社文芸文庫 よA 1)

暗室 (講談社文芸文庫 よA 1)

暗室 (講談社文芸文庫 よA 1)

作家
吉行淳之介
川村二郎
出版社
講談社
発売日
1988-05-02
ISBN
9784061960176
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暗室 (講談社文芸文庫 よA 1) / 感想・レビュー

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HANA

著者の性を題材にした小説は暗い密室に閉じ込められたような陰鬱さと隠花植物を眺めるような淫靡さが好きなのであるが、本書は著者自身をモデルにしているせいか、長編であるせいか、あっけらかんとしたイメージ。本編はそういうせいで読みつつ少々戸惑ったのだが、挿話的なエピソード、150匹のメダカとか屋根裏で暮らす兄弟とかは面白く読めた。特に後者のエピソードは傑作中の傑作「出口」に通底するものがあるな。著者のこういう暗闇の中で蠢く体内回帰願望的な作品本当に好き。性を日常のものとしてその間を浮遊する本編との対比がいいな。

2021/11/11

GaGa

うまれつき病弱なため、子をつくることは望まず恐れすらしている「わたし」と子の産めぬ体となった女「夏枝」。人が生まれるために行う性行為=生と性が欠落した性行為のぶつかりあいが、もがき苦しむかのようで、物悲しくも息苦しい。官能小説でありながらハードボイルドな雰囲気が漂う傑作。読む前は、どうせカメラマンが暗室で悪さをする話だろうぐらいに思っていたが、まるで違った。反省。

2012/03/16

ゆか

前情報を何にも知らない状態での読了。背表紙のあらすじのせいか、もっとゾクッとする恋愛小説かと思いきや、哲学的な言い回しではあるものの、この時代にして結構エロい小説。ちょっと朝の電車で読むのが気が引けるほど…。小説である主人公は、色んな女性と関係をし、時にはその相手達にもヤキモチを焼き、相手が深みにはまりそうになるとうっとおしがり、子供なんて絶対に欲しくない。主人公はどこにでもいる男性でした(笑笑)って、文章にすると酷い男性だなぁ〜

2018/10/26

佐島楓

繰り返される、性、生、そして死のモチーフ。やはり吉行さんは、女性の不思議というものを考え抜いた作家ではなかったか。女性としての悦び、母性の謎、男性としての自身の乾いた性。男と女とは、これほどまでに考えていることが違うのかと驚かされた。

2012/12/12

ちぇけら

吉行淳之介の小説は沼。登場人物も、ページをめくるぼくも。沼のなかはぬるく形がおぼろげで、そこにはひとの実体がなくてあるのは性器をぶらさげた躯だけで。生殖から切り離されたセックスが、ポルノグラフィーのように断片的な描写とともに、女のからだに幾重にも重なっていく。様々な男のにおいが香水のようにしみつき新たな興奮が起こる。「あたしの躯から離れると、すぐ身仕度して、居なくなってしまっていたんだもの」セックスの果てには死のイメージ。女の躯の上でこと切れるその瞬間、開けるドアの先は暗室。まっくらな、空洞。

2018/12/06

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