哀歌 (講談社文芸文庫 えA 1)
哀歌 (講談社文芸文庫 えA 1) / 感想・レビュー
安南
「踏み絵のイエスの疲れ果てた顔、悲しい眼、それは『哀歌』のなかで九官鳥の眼となり、犬の眼となり、主人公の妻の顔になっている。」作者の病床体験という同じ題材でありながら、先に読んだ『満潮の時刻』は暖かな読後感だったのに、こちらの短編はどれも暗く、寒々しい。読んでいて辛くなる。まさに、哀歌。でも、哀しい歌がそうなように哀しい物語こそ慰めになるのかも。『満潮の時刻』が裏『沈黙』ならこちらのエレジーは前奏曲だそう。中学時代に一度読んだきりの『沈黙』、再読したくなった。
2013/01/27
たぬ
☆4.5 「沈黙」発表前に書かれた短篇12。書名のとおり、どのお話にも哀しい歌が通底しているようだった。大連にいる「カラス」や作家で結核病みの40男など作者自身を描いているのかなという作品も。迫害されたキリシタンのこと、ライ病患者のこと。どれも胸に迫ってくる。
2019/09/26
蛭子戎
短編集だがキリスト教ネタは本当に尽きない。それぞれの作品のなかに沈黙にも出てきたじっと陰から見てるらしいキリスト的なキャラが配置されているが、個人的には一緒に苦しんでくれる神よりお布施してやるから救ってくれる神が良い。
2018/08/31
Ayakankoku
大好きな遠藤周作。ただし今回の短編は個人的にはヒットなし。弱さ、卑怯さは人間が逃れられないもの。これらを冷静に描いており、なかなか渋い一冊だった。
2018/08/05
ken
「沈黙」のテーマを得るために「哀歌」を書いたということで、ここでは一貫して弱く卑怯な人間と彼の救済の可能性が描かれている。それ以外にも遠藤周作が繰り返し扱うモチーフである「ハンセン病患者」や「結核患者」の作品が多かったり、イエスを「犬」や「九官鳥」に重ねる彼の常套手段も多くみられたりもする。総じて遠藤周作文学のエッセンスがふんだんに盛り込まれた良書で、ファンであれば一読の価値あり。と言っても、例の講談社ボッタク○文庫からの出版ということで残念。古本屋等で出会ったら間違いなく買いの一冊。
2018/06/24
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