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その夏の今は・夢の中での日常 (講談社文芸文庫 しB 1)

その夏の今は・夢の中での日常 (講談社文芸文庫 しB 1)

その夏の今は・夢の中での日常 (講談社文芸文庫 しB 1)

作家
島尾敏雄
吉本隆明
出版社
講談社
発売日
1988-08-04
ISBN
9784061960220
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その夏の今は・夢の中での日常 (講談社文芸文庫 しB 1) / 感想・レビュー

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こばまり

終戦により特攻出撃を危うく免れるという極限体験が源となっているが、作家曰く「眼をあけて見た周囲を書いたものと眼をつぶったそれ」の、眼をつぶった方が私には難しく、ともすれば探ることを止め幻想の世界にぼうと浸ってしまうのであった。再読を誓う。

2021/08/14

yn1951jp

敗戦の8月に読むべき書のひとつ。ベニヤ板のスイサイド・ボート乗組員として、無聊に出撃を待つ日々(出孤島記)、こころにもからだにも死衣装をまとったが…近づいてきた死は、はたとその歩みを止めた(出発は遂に訪れず)、出撃は一切を透明にしてくれるはずであった。その作用が期待できなくなってみると、過去はよみがえり…私の怠惰や違背に脂肪が加わるのをとどめることができない(その夏の今は)敗戦の日の前後は連続していない、それを超えて生きるうしろめたさを「眼をあけて書いた」島尾の私小説的超現実主義の原点。

2015/08/25

zumi

待つ。死への首途を待っている。肉体も精神も麻痺する。死の恐怖・生への執着が日常に入り込む。大岡昇平と併せて読めば、より、グッとくる。死への果てしない距離が、完結性を持つことなく、引き伸ばされて行く。島尾敏雄の体験の結晶とも言うべき、この作品集には間違いなく妖しく物狂おしい美しさがある。どれも最高だが、「出孤島記」「出発は遂に訪れず」は、あまりにも見事である。

2014/06/21

きつね

「島尾敏雄は自分の小説を分類して、眼をあけて見た周囲を書いたものと、眼をつぶったそれを表現したものとの二つになると言っています」なるほど。「夢の中での日常」は語り方自体が夢的な論理で出来ていて、文法的に破綻しているわけではないが、現実の論理としては破綻している文章といったらいいだろうか、夢の中での思考の論理性を写しとったものとして秀逸だと思う。

2013/10/01

YO)))

冒頭三作は戦時もの.特効艇部隊の隊長として出撃の時を待ちながら,遂にそれを果たすことなく終戦を迎えるまでの数日間―静謐な激動とでも言うべき濃密な日々―が描かれている.否応なく生と死の挾間に滞留させられた「私」の,揺れ戸惑う心情と,戦下においても重く横たわる配置先の島での日常とが,冗長,粘着質すれすれの細やかさで書かれており,大変読み応えがあった.後半は,見た夢をそのまま書き起こした体の,夢小説が四作.こちらにも作家の抱える切実さは確かに刻まれているのだろう,とは思いつつも,正直ちょっとしんどい感じだった.

2012/08/25

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