ボードレールの世界 (講談社文芸文庫 ふC 1)
ボードレールの世界 (講談社文芸文庫 ふC 1) / 感想・レビュー
村上駿斗
小説家にして詩人、仏文学者でもある福永が、ボードレールに捧げた想いの深さを感じさせる論文集。詩人が己の内面を外界に投射し、投射された事物によって再び自己の内面を構成する過程、事物の言葉になる以前の声「原音楽」を異なる言葉の並置によって浮かび上がらせようとする手法、ボードレールにおける匂いや記憶の重要、醒めてしまうことを知りながら危険な快楽に耽り込まずにはいられない詩人の悲劇、などがすでに福永によって指摘されていたことに、驚かずにはいられなかった。詳細をきわめる年表も含め、今なお価値を失わない一冊。
2021/07/23
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