暗い絵,顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫 のB 1)
暗い絵,顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫 のB 1) / 感想・レビュー
かに
戦争を経験した者にしかわからない、戦争や軍隊生活が戦後やその後の生活にどのような影響を与えるのかがとても悲しく切ない。 生死に対して、人生に対して、他人に対して虚無感を持ってしまう戦争の影響は恐ろしく、戦争でのトラウマがその後の人生に影響を与えてしまう戦争というものは本当に恐ろしいものだと感じる。戦死した方、戦後を生きた方双方に苦しみがある。
2023/04/18
かえで
戦後派文学を代表する作家でありながら、現在全くもって無視されている野間宏さん。現在、気軽に本屋で入手できる著書はこれだけであり、あとはほとんどが絶版。代表作の真空地帯も絶版だ。その現状には、日本の出版界の廃れが感じられる。これは、野間さんのデビュー作を含む初期短編集である。すべての作品が戦争終了直後の異常な時代を切り取って書かれたものである。初期と戦後の異常な空気感のため、文書の粗や物語の破綻もみられるけど、勢いと戦後という時代を見事に伝えた作品たちは力強く引き込まれる。表題作の2作がやはりいい。
2012/05/14
肉欲棒太郎
『崩壊感覚』これは素晴らしい。人間の「肉欲」の問題に正面から取り組んでおり、埴谷雄高の『死霊』は結局そこを避けた。戦後の虚無感や人間のエゴイズムについて書かれた『顔の中の赤い月』『残像』も良い。『暗い絵』は正直あんまりピンとこず、何となくだけど、この作家は戦時中よりも戦後を書いたものの方が面白いんじゃないかなと。
2017/03/20
ヒラオカキミ茸
読めば読むほど面白くなってきちゃうから、最初は、進まない…。と思ってたのに最後には、もう読み終わっちゃう、もったいない!てなる。
2012/09/08
nightU。U*)。o○O
著者の初期代表作が拾われ、デビュー作を先頭に発表順に並べられている。「暗い絵」は文句無しに戦後、いや単体でも力を持ちうる権威ある孤島のような大傑作。僕は大学生は必読、と思うほどに青春時代に広がる感情の交々が余すところなく書きだされていると思った。「顔の中の赤い月」は「暗い絵」以後「肉体は濡れて」、などの短編があったように思うが、暗い絵からの特に男女の結びつき、というモチーフを連ねて書いたものの到達点を極めるこれも傑作。然し彼の文体である「執拗な観察」がそのまま書かれるものばかりで、読み進めるのは些か退屈。
2014/01/16
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