雨の音 (講談社文芸文庫 うA 1)
雨の音 (講談社文芸文庫 うA 1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
どうしてこんな小説が書けるのか。どうしてこんな生き方ができるのか。情熱の赴くままに男性に恋し、困難に直面しても楽観的にそれを乗り越える。ただただ圧倒されるばかりだった。中短編集でいずれの作品も作者が70代の時に書かれたそうだ。どの作品も明快な文章で書かれており、全く衰えを感じさせない。「雨の音」は過去と現在を自由に行き来するプロットに痺れた。融通無碍な内容で、過去のことを後悔するでもなく、賛美するでもなく突き放した視点で描いている。ただ作者が長年一緒に暮らした北原武夫の死には、深い悲しみが感じられた。
2016/12/09
橘
私小説なのかな…よく分からない感覚でした。相手の男性に執着しないのかと思えば同じ事繰り返し考えていたりして、、、その上、「あの人」「その人」の記述で混乱しました。物語の世界の仮名であっても、名前付ける発想が無かったんだろうか。宇野先生、ご自分の心には正直だったのかもしれない。この夫婦、周りにいる人は振り回されそう。。
2022/03/14
しお
東郷青児や北原武夫との恋愛を元にした自伝的な小説が多かった。東郷がモデルとされる男性と心中した女性の持ち物だったおしろい入れについて書いた「この白粉入れ」と、関係を持った男性の娘からの手紙について書いた「それは木枯らしか」が良かった。だいたいの登場人物がかなり奔放な行動をしているが、語り手の思考は至って冷静に綴られている。代表作の「色ざんげ」と「おはん」もいつか読みたい。
2022/08/15
まーちゃんごめんね
『雨の音』は「私小説」であるが、私=私の人生を語ることを拒んだ「私小説」である。つまりこの作品は、宇野氏という個人を越えて、「人間」という存在そのものを描くことに成功している。 https://note.com/eto19321225/n/nec01ad2945b4
2024/09/06
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