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横しぐれ (講談社文芸文庫 まA 2)

横しぐれ (講談社文芸文庫 まA 2)

横しぐれ (講談社文芸文庫 まA 2)

作家
丸谷才一
出版社
講談社
発売日
1989-12-26
ISBN
9784061960657
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横しぐれ (講談社文芸文庫 まA 2) / 感想・レビュー

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白玉あずき

和歌や連歌の素養が無くて、今一つ読み切れないもどかしさ。みやびなお貴族様たちの和歌の優劣がわからないのは昔からだが、とても楽しく読ませていただきました。隠れていた家族の歴史、和歌から自由律俳句へと連なる日本文学史や山頭火への興味、色々な切り口でぐいぐい読ませてくれるのだが、何しろ相手は丸谷才一氏。計画的犯行というか、なんだかどこかにトラップが仕掛けてあるのではという気配。一読目は素直に楽しみ、再読後は丸谷氏の「たくらみ」を見破りながら読むのが良いのだろうか。情緒的文学を語りながら、知的で構築的な世界。

2020/08/13

三柴ゆよし

上手すぎる。日本文学史そのものをめぐるミステリであると同時に、「私」という存在の謎を突き詰めんとする近代以降の文学伝統のパロディでもある。「樹影譚」と並ぶ、丸谷才一流「私?」小説の大傑作。おもしろいのは、この小説では、語り手側にふりかかる偶然、及び意識的・無意識的な見落とし、読み落としによる進展と留保があまりにも多い。たとえば丸谷があとがきで言及しているナボコフもこういう偶然力にわりと頼る作家だが、絢爛な文体と細部の丁寧な描きこみによってそれを不自然と感じさせないところが、両者非常に似通っていると感じた。

2019/12/18

チャーリブ

ひさびさに読み直してみたが、すっかり粗筋も忘れていたのでほとんど初読状態。話は、作者を擬した「私」が、死んだ父親が旅先で山頭火に逢っていたかもしれないという可能性を「横しぐれ」という言葉を手がかりに探っていくという、いわば国文学ミステリー。歌合で判者俊成が「横しぐれ」という当時の新語を優雅ではないと非難したという古典文学の話なども興味深いが、肝心のミステリーの方は最後の最後になってとんでもないオチが現れてきて、まさに人生のミステリーとなっている。人生不可思議。○

2021/09/09

ドン•マルロー

何度読んだか知れない。笹まくらでもなくたった一人の反乱でもない。丸谷才一の随一の作品は間違いなく表題作であろう。父の過去を求める話。そして父の過去を茫々とけぶる横しぐれのなかにおいてくる話。伏線がいささか作為的にすぎるが、それもご愛嬌というものだ。フィナーレの美しさが全てを消し去る。読者の感動までをも横しぐれのなかにおいてくることはきわめて困難だ。

2019/03/06

ネムル

日本文学そのものを題材にしたミステリ。『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『六の宮の姫君』の祖先。題材を種田山頭火と自由律詩俳句にしているからか、言葉の切り詰め方と変転が流麗で詫びている。そしてラスト、死の意味付けから父の葬送という流れそのものがミステリの本質を直撃するようでいて、なかなかショックだった。傑作。併録短編では「だらだら坂」が好き。

2015/04/13

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