文学の運命 (講談社文芸文庫 おC 3 現代日本のエッセイ)
文学の運命 (講談社文芸文庫 おC 3 現代日本のエッセイ) / 感想・レビュー
ころこ
単なるエッセイだと思えば、タイトルほどの硬さは感じられない。大きく分けると、①戦前の文壇思い出話、②自作の解題、③戦後に書かれたその他の部分だ。遥か以前に夭折した文学者との逸話を語るのは文壇があるという幸せな時代のことであり、死後に全集が出る位の文学者だという自認がある著者によるものだ。反面、それは閉じた世界のお話で、現在の社会とは直接関係ないということでもある。②ざわざわしながら少し丁寧に読まないと『野火』が人工的に書かれていることが読み飛ばされてしまう。③では、折口信夫論やスタンダール論に注目したい。
2022/12/20
ken
大岡文学のルーツ(小林秀雄や中原中也との出会い)や、作品創作の背景や自身の思い(『レイテ戦記』『俘虜記』『野火』辺り)などを綴るエッセイ。「エッセイ」といった軽さはなく観念的でゴツゴツした文体は分析的な大岡昇平らしい。この時点で多くの読者は遠ざかる。内容もマニアック。本書は大岡昇平ファンでない限り終始退屈を感じる一冊だと思われる。だって読メの感想だって1つもないないし。一応(興味深く)『野火』を(執念で)『俘虜記』を読了した自分でさえもほとんどついていけなかった。大岡ファンなら間違いなく楽しめるとは思う。
2020/03/20
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