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漂民宇三郎 (講談社文芸文庫 いC 2)

漂民宇三郎 (講談社文芸文庫 いC 2)

漂民宇三郎 (講談社文芸文庫 いC 2)

作家
井伏鱒二
出版社
講談社
発売日
1990-04-01
ISBN
9784061960749
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漂民宇三郎 (講談社文芸文庫 いC 2) / 感想・レビュー

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活字の旅遊人

井伏鱒二は一時期集中して読んでいたが、久々。富山の北前船について調べたときに知った小説。松前から江戸に向かう東廻り航路途上で漂流した長者丸。アメリカの捕鯨船に救助され、ハワイからカムチャッカやらアラスカやら、いろいろ回され松前に。こういう漂民としてはジョン万次郎が有名だが、他にもきっと沢山おられたのだろうな。埋もれてしまった過去の人々の経験や思いを再現し、伝えていくことも文学の役割だな、と改めて感じることができる作品だった。著者はこれを自選集に入れず。余り好みではなかったらしい。それを取り上げる文芸文庫!

2021/06/14

JVSTINVS

これは小説というより、散文の叙事詩のような作品であり、描写は的確なのだが、小説的面白みに欠け、したがって井伏も気に入らなかったのは否定しがたい。しかし、ホメロスなど好きな人には、むしろ毛色がまったく違う、簡潔でシンプルながら、けっこう俗な味のする叙事詩としておすすめする。下のほうの描写までふんだんにあるので、その向きの読み方もできる。

2023/09/04

鬼山とんぼ

50年前中学生になる時初めて買った3冊の文庫本の一つが井伏鱒二の『七つの街道』だった。その後彼の本とは縁がないが、城崎温泉や定宿の甲府常盤ホテルなどあちこちで彼の足跡に接してきた。旅好きだったんだね。本作は日経書評欄で町田康が取り上げていたので読む気になった。『ジョン万次郎漂流記』で直木賞を受け、その14年後の作品。参考資料も蓄積し続けていたのだろう、空想の人物を素材にしてこれだけ生々しい物語をでっち上げるのだから、その創作力、執念深さ、粘着力には舌を巻く。それでも語り口は軽妙で重苦しくない。文の職人だ。

2021/08/29

寛理

最近読んだ小説でいちばん面白い。思想の科学系の人たちは井伏の本にコスモポリタンを見出していたようだが、私はそうは思わない。外人が出てきても、それをすべて「日本語」表現に飲み込んでしまう点をユーモラスに描いた小説だと思う。宇三郎は成り行き上、外国に残るが、それはむしろ一人で「日本」となることを選んだと言える。

2020/11/02

笠井康平

娯楽小説としては最高水準にある一冊だが、これを読まずして玄人は気取れないというものでもないと思い、遅れてきた一ファンとして、にやにやすることにした。

2011/12/17

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