幕が下りてから (講談社文芸文庫 やA 3)
幕が下りてから (講談社文芸文庫 やA 3) / 感想・レビュー
しゅん
本作について「とてもつまらなかった」と書いている人がいて驚いた。自分はこれを「普通に面白い小説」だと思ったから。おそらく、私は安岡の小説をここ1,2か月で4冊読んだので、母の精神異常と死で『海辺の情景』を思い出し、先輩作家の妻との姦通で『月は東に』を想起する。そうしたわかりやすい主題以外でも、あらゆる細部が安岡の他の小説群と呼応するから、刺激を受けて楽しくなるのだろう。となると、細部をつなぎ合わせて読解する「テマティズム」は、知的に洗練された遊戯というより、誰しもが無意識で行っている読み方なのだろうか。
2022/09/15
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