贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
贅沢貧乏 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) / 感想・レビュー
ヒロミ
面白かったです。森茉莉流の豪奢なレトリックに彩られたうつくしき哉、人生。エッセイに分類されているんですが、短編小説風の不思議な話も収録されています。浅草のノンシャランな気楽さと風通しを愛し、懶惰にアンニュイにチョコレートをかじるマリア。決して真似は出来ない生き方だけれど、ほんの少し前の日本にこのようなエトランゼ気質の女性がいたことが誇らしいです。
2018/04/26
パフちゃん@かのん変更
主人公牟礼魔利(マリア)、父欧外(鴎外)とあるように作者森茉莉さんご自身の物語らしい。昭和30年代、著者60歳前後の頃の話。両家の娘で父に溺愛され、身の回りのことは女中や使用人にしてもらっていた。今は6畳のボロアパートで赤貧の暮らしをしているが、持ち物は独自の美学で選ばれたものばかり。でも生活力がないからよい服が虫に食われて穴が開いても繕うことは出来ず、夜中にこっそり川に捨てに行く。13歳の少女がそのまま中老になったような風情だという。『森茉莉贅沢貧乏暮らし』という神野薫さんの本を読みたい。
2018/01/18
ユメ
この本を読んだら、森茉莉という女性に恋をせずにはいられなかった。硝子越しに世界を見つめたマリア。白雲荘での暮らしは貧寒をきわめたものでありながら、彼女は六畳の部屋に欧羅巴の夢を飾り、それに恍惚とした。「美はいつでも最大のもの」と信じてやまなかったマリアの審美眼にかなった部屋の光景は、読む者もうっとりさせる。真の贅沢とは心が豊饒であることだと彼女は教えてくれた。少女のままのような無垢さ、美と夢を追求する突き抜けた精神力、文壇の紳士たちへの冴え冴えとした眼差し、森茉莉という人はなんと愛すべき女性なのだろう。
2017/08/16
こよみ
解説に書いてある通り、不思議と平成でも通じるところがある。世の中変わってないのかもね。
2013/10/30
tkkr
森鴎外を父に持つ森茉莉さんの、小説のような不思議なエッセイ。由緒正しい良家のご息女として生まれ、お姫様のように育った彼女だが、戦後にはかつて「市外」と呼んでいた世田谷の代沢のボロアパートで暮らすことになる。栄華を極めた者が没落するというのは大昔から人気の鉄板ネタなので、当時は興味本位で結構読まれたんじゃないかしら。「贅沢貧乏」なんて自虐めいた題名だけれど、持ち物、食べ物、人間関係、強いこだわりを持ちマイワールドを生きる様には気高さしか感じない。アクが強い文体だけれど不思議と癖になりもっと知りたくなる人。
2017/04/19
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