天誅組 (講談社文芸文庫 おC 6)
天誅組 (講談社文芸文庫 おC 6) / 感想・レビュー
e.s.
大岡が晩年親炙したドゥルーズの概念を借りるなら、徳川体制末期の志士/浪士は、藩を超え連結-切断を行い、「日本」の身体を脱領土化し、そして天誅組のごとく天皇へと再領土化する運動体である。本作が、吉村虎太郎の内面を描写する物語体を維持できず、複数の人物の史伝体へと崩れ落ちていくのも、そうした運動の現れだろうか。ほぼ同時期に発表された司馬遼太郎の『竜馬がゆく』には無い、歴史の不穏当な出来事の体験がここにはある。それは、大岡がもつ仄暗いクーデターへの欲望ではないか。
2016/01/02
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