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荒魂 (講談社文芸文庫 いA 10)

荒魂 (講談社文芸文庫 いA 10)

荒魂 (講談社文芸文庫 いA 10)

作家
石川淳
出版社
講談社
発売日
1993-05-01
ISBN
9784061962187
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荒魂 (講談社文芸文庫 いA 10) / 感想・レビュー

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ハチアカデミー

「佐太がうまれたときはすなわち殺されたときであった」素晴らしい一行から始まる物語は、主人公と思われた佐太は常に傍観者であり、彼を取り巻く俗人どもが、権力闘争と愛憎劇と宗教対立を繰り広げる訳のわからん一大絵巻である。言葉を発することなく、花売り娘とともに現れる佐太の眼差しの元で、作者の「傀儡」である多数の人物が入れ替わり立ち替わりどんちゃん騒ぎやら濡れ場やらドンパチ騒ぎやらに明け暮れる。貞節観念も道徳観念もぶっ飛んだ、奇々怪々な物語。その根底にあるのは施政者、権力者、政治家への強い猜疑心と軽蔑の眼差し。

2013/09/17

AR読書記録

権力にカネに欲望に、圧倒的な力を見せつける俗人どもが次々と登場するが、その力はあくまで人間の世界のものにすぎない(といっても並外れているが)。しかし佐太のそれは初めから人間の世界を歯牙にもかけぬ超越したものであり、俗人どもの営みがエスカレートすればするほど、それを矮小化するように佐太の存在感は膨れ上がっていく。初めはこの土俗的な力に溢れた佐太がどのような物語を紡ぎ出すんだろう、と思ったが、佐太自身は登場人物の立場からはどんどん後退し能動的に筋にからむでもない。でもずっと中心にある。不思議なものを読んだな。

2014/12/13

渋野辺

冒頭からぐっと引き込まれるほど圧倒的な佐太の生い立ちとは対照的に、地上のあらゆる利欲を求めて対立し合う小物臭い人物らの話が物語の大枠。他の読者さんもおっしゃるように、物語が大きく動いているように見えながらそれは地上でのいざこざに過ぎず、むしろ佐太の悠悠たる様がその存在を深く物語に緊張を与え、鮮やかになっていっているように感じた。

2015/03/19

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