普賢・佳人 (講談社文芸文庫 いA 11)
普賢・佳人 (講談社文芸文庫 いA 11) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「普賢」は、第4回(1936年度下半期)芥川賞受賞作。奇妙な小説だ。タイトルは釈迦の脇侍たる普賢菩薩のことだろう。しかし、その一方、ここで描かれるのは私小説風の混沌とした世界だ。そもそも語り手の「私」を含めて、登場人物のいずれもが得体のしれない男女ばかりだ。プロットもあるような、ないようなだ。作者の石川淳は太宰より10歳年長だが、ほぼ同時代を生きており、本書もデカダンス文学といえばそうだ。ただし、戯作調の文体は鏡花のようでもあり、八文字屋系の浮世草子のようでもある。良く言えば、玄人好みの作家なのだろう。
2015/02/24
kaizen@名古屋de朝活読書会
【芥川賞】普賢というから、普賢岳が出てくるのかと期待しながら読み進んだ。東京でフランスの女性ピザンの伝記を書いていると称する主人公。ジャンヌダルクとの関係がよく見えない。友人文蔵と文蔵の妹ユカリ。なんだかなという感じで話がぐだぐだ進む。文章の善し悪しは分からないが、もう少し明るい話もあってもよくない?
2014/03/25
アナーキー靴下
安部公房『壁』の序文に心を掴まれ何か読んでみたいと思いつつなかなか手が伸びず、お気に入りの方が本書を読まれているのを見て良い機会と手に取る。独特の文体は饒舌体というものらしく、饒舌体で調べると太宰治が出てくるが、太宰治と違って語り手の「わたし」は希薄、たびたび出てくる「ペンを置いた」的な表現からの語りこそ多少色が濃くなるものの、それは作中の「わたし」よりは作者の「わたし」、微妙に階層がずれる。作中の「わたし」は思惟を交えながらも脊髄反射的やり取りにただただ巻き込まれる、いわば実況中継カメラのようである。
2024/11/12
みっぴー
第四回芥川賞受賞作品『普賢』が収められた短編集。一言で言うと、読みにくい。改行無しで、ひたすら他人の日記を読んでいる感覚。道で、見知らぬ人にいきなり身の上話を聞かされたら、、、疲れと苛立ち以外何を感じるだろうか?まあ、そんな感じの私小説でした。芥川賞って、読みにくさを競う賞でしたっけ?と、審査員に問うてみたい…。
2017/04/16
mii22.
芥川賞受賞作『普賢』のみ読了。読友さんの、登場人物が得体のしれない男女ばかりという感想に興味を持って。たしかに得体のしれない男女の日常の出来事が世間話を聞いているような感じで描かれています。引き込まれはしないけれど時々クスッと笑えて面白い。(特に主人公の行動や言動)以前に読んだ『紫苑物語』のような壮大で優美な物語の方が好きですが、まったく違ったタイプの本作も読むことが出来て良かったです。
2015/05/01
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