正岡子規 (講談社文芸文庫 あI 1)
正岡子規 (講談社文芸文庫 あI 1) / 感想・レビュー
nightU。U*)。o○O
子規への深い共感と愛着が感じられるとても丁寧な評伝。それに溺れることなく寧ろ理解のゆえに作品や姿勢を紐解き、批判してみせる。子規の人生には劇的で謎な事件が多いが(従軍や後継ぎの拒否など)、それも充分納得させられた。要は、子規というのは物事を相対化して、整序だった論を組み立てる健全な批評精神の持ち主で、漱石とは違う形の、しかし対を成すような明治の精神である。異常なほどの多作も、こうした態度と近代性の結果だろう。しかし病牀六尺、墨汁一滴と仰臥漫録らの死別直前の文章への異常な執着は、なぜか殆ど触れられなかった。
2015/11/05
AR読書記録
今さらだけど、講談社文芸文庫の「現代日本の評伝」シリーズは、「誰を」より「誰が」評論したかが大事なのだな。っていうか評伝ってそういうものか。いや、評論と言われたらそんな気はするけど、評伝だと...いや、「誰を」だけだとそれは伝記か...ブツブツ... まあつまり、粟津氏の注目する部分に、より焦点をあてて描かれる子規の生涯と精神。俳句のひと、という浅薄な知識では全然、この“表現の改革者”という広がりに気づけなかったな。明治人の“ナショナリズム”についてもちょと考えさせられる。『坂の上の雲』にいくべきか。
2014/07/09
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