天上の花: 三好達治抄 (講談社文芸文庫 はG 1)
天上の花: 三好達治抄 (講談社文芸文庫 はG 1) / 感想・レビュー
佐島楓
著者は詩人・萩原朔太郎の娘。その叔母と三好達治との関係を、フィクションとして書いたもの。ということだが、モデル小説の難しさもさることながら、三好の激情家ぶりがあまりにも凄くて引いてしまった。端的に言えば叔母に対する愛情余ってのDVなのだが、三好を幼少期から慕っていた著者はどうしてこんな痛々しいものを書いたのだろう。少し歪んだ愛情表現なのか? 晩年、孫を得ることで穏やかな性格になっていく三好にはほっとさせられた。文学史に出てくるような面々が次々に登場するので、当時の人間関係を知りたい方は面白く読めると思う。
2022/03/28
みーまりぽん
著者の萩原葉子さんは朔太郎の娘さんなのですね。 物書きとなる以前からの恩人、三好達治の想い出をまとめた作品。 優しくて厳しい師匠のような三好さんのことを愛情込めて書き上げてある、のだけれど、、 三好と叔母との結婚生活の破綻を描いた「慶子の手記」の印象が鮮烈すぎて、なんてやつだ的イメージが刷り込まれてしまったみーまりぽんであった。。 ま、その「手記」も再現イメージ画像みたいなもので、作者による創作ではあるのですが。
2014/11/13
ぱすこ
「月に吠えらんねえ」から、朔太郎、三好に興味を持ち。三好は士官学校でニ二六の西田と親しく、朔太郎を崇拝、て、普通ならわけわからない精神構造で。それなら恋愛もさぞ極端だったに違いなく、上記マンガ作品で主要登場人物に設定されてるのも分かってきた。この作品では、破綻した恋愛と朔太郎の遺児に対する情が、淡々と記されているだけだが、それがこの詩人の静かな狂気を、実際の三好を見ず知らず(当然だが)の読者にも、感じさせる結果となっており。人間ってかなしいな、という気持ちで読み終えた。
2016/06/11
オワリハジメ
萩原朔太郎の娘視点で見た三好達治を中心とした随筆。慶子の手配は著者の訂正を見るまで本人の手配なのかと思ってた。三好達治という人の人間味のある温かさとダメさと偉大さ、萩原葉子本人の偉さが分かる。苦労してきたんだろうにしっかりした人なんだなあと文章を見てて思う。歳上の人をたてる、気を使う、その為に自分は我慢するという事ができる人だと思った、萩原朔太郎目当てで読んでいたけど他の作品も読んでみたい。三好達治は朔太郎を一生尊敬してたんだなあ。
2016/11/23
オフィス助け舟
ふつと、まるでみんなが、御者も馬も、たよりない鳥のやうな運命に思われる。/さやうなら、さやうなら、彼女の部屋の水色の窓は、静かに残されて開いてゐる。(「測量船」――『昼』)近代詩の最重要人物である萩原朔太郎の娘・葉子の作品で、朔太郎に師事した叙情詩人の三好達治との思い出を綴っている。葉子に対する優しさと、それでも文章へ向かうにあたっての厳しい教えが、いかにも三好達治という感じがする。
2005/12/19
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