殉情詩集,我が一九二二年 (講談社文芸文庫 さE 4)
殉情詩集,我が一九二二年 (講談社文芸文庫 さE 4) / 感想・レビュー
ハチアカデミー
やはりとっちらかっている。文体や構成、詩風が、いつくかに分類することは可能であろうが、作品によってバラバラなのだ。もはや、それが佐藤春夫なのだろう。女性への憤怒を昇華したかのような詩があれば、獣じみた欲望を詠んだもの、政治的な詩もある。とはいえ、それにも関わらず全体的に目立つのは、乙女チックな詩歌なのだ。とかく不思議な文学者である。お気に入りは西欧趣味の「メフィストフェレス登場」。最後の哄笑に余韻がある。代表作「秋刀魚の歌」、谷崎夫人への愛を思わせる「或る人に」、谷川俊ちゃんっぽい「詩論」も所収。
2014/02/20
ふくしんづけ
『初期詩集』五音七音のくり返しで、日本語の古き良さを生かしたリズムの詩が多い印象。特に好きなのは『殉情詩集』の「感傷風景」〈歎きは永く心に建てられた。あの新築の山荘のように。〉と「メフィストフェレス登場」〈それに思ひ出という貴女の/青ざめた亡霊によく奉仕して御座る。〉〈さて智恵のない地盤さね、/まるでこれや女ごころの砂浜だ。〉〈僕がちょっと歩いただけでも、/何と! 少々は揺れませう。〉『佐藤春夫詩集』のはしがきより、〈言葉やや長けにしとおもへば心はすでに弾みなし。〉
2022/09/19
わたなべ
再読
2016/02/10
わたなべ
恋愛至上主義かもしれないを読んで以来多分佐藤春夫が好きだった。乙女チックな詩情が確固足り得ているのが素晴らしい。近代詩の中でも取り分けて好き。谷崎潤一郎の奥さんのことを思うとなんだか切ないね。
2015/03/01
saba
三田キャンパスにある佐藤春夫碑に刻まれているのは、あの「若き二十は夢にして 四十路に近く身はなりぬ/人問ふままにこたへつつ 三田の時代を慕ふかな」ではない。「酒、歌、煙草 また女 ほかに学びしこともなし」あたりがまずかったか。
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