謡曲平家物語 (講談社文芸文庫 しC 10)
謡曲平家物語 (講談社文芸文庫 しC 10) / 感想・レビュー
フリージア
白洲次郎氏の妻白洲正子さんが著者というので手に取った。ご自身は小さい頃から謡いと舞をされていたという。解説の水原紫苑氏は「謡曲を通して描き出された平家物語の人物像群の書である」と端的に述べられ、能知識が全く無く平家物語の人物名も覚束ない私はなるほどと納得した次第。緞帳も無く舞台は松の絵が正面にあるばかり。そこで幽玄の美が繰り広げられる。謡曲の紹介は面白かった。今度お能を観てみたいと思います。
2021/04/26
かごめ
謡曲集を傍らに再読。昨年、平家物語を読んだときは感慨を得なかったが、謡曲を通してみてその元となった平家物語の優れた点があらためて理解できた。なかでも「八島」は心打たれた。シテは義経だが、義経は平家の負修羅とは違い勝修羅である。謡曲終わりの方で、義経が月光の下に八島の合戦の様子を語る。そして夜明けと共に消えていく義経。その表現は勝修羅とは言え修羅の道に堕ちた武士の業は哀れを誘う。白洲氏の随筆は鑑賞や知識だけでなく、能の実演者としての裏づけがあり、それでいて理に流されずに情景に引き込まされた。
2014/08/14
えいこ
平家物語に題材をとる謡曲の解説。白洲正子の端正で奥深い文章が物語を生き生きと蘇らせる。能の予習や大河ドラマの補完にも役立つ。人物像、書かれた背景や世阿弥の作曲の意図、舞台となった土地の解説など幅広い。謡曲としての出来映えについても、評価の良し悪しがはっきりして小気味よい。木曾義仲に絡む「兼平」「巴」、「妓王」や「仏御前」など白拍子の話は好み。梶原親子の話、大原御幸もよい。この世に思いを残す者に昔語りをさせる「夢幻能」とはよく考えられたもの。見る側の想像に委ねる究極のシンプルさが600年続く理由。
2022/08/17
たけはる
小説を書くテンション上げに。いま、貴族から武士へ移り変わるこの時代に興味があるのもあり、おもしろく読みました。「箙の梅」「六代御前」「大原御幸」がとくに心に残りました。とりわけ「大原~」の建礼門院は、本書にあるとおり尼独特のなまめかしさがあってそそられます。
2020/07/10
Noelle
単純に面白かった。前から能・文楽・歌舞伎の鑑賞の折に平家物語の知識が必須だとの思いがあったが、原書では未読。本書は、幼少より能を習い、女性として初めて能舞台に立ち免許皆伝まで授かった著者が、世阿弥が平家物語を能に昇華させていった結果の幽玄能だと、あらすじを辿りつつ能の詞章にどういかされているかをわかりやすくん解説したもの。修羅能は特に平家の若い公達の物語が多くてタイトルと内容がなかなか一致しないのが、著者の解説では、一人一人の物語がとてもわかりやすく浮かび上がっている。観劇前に再度読み直したく思う。
2020/10/27
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