阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫 ロB 1)
阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫 ロB 1) / 感想・レビュー
shinano
本書作品群の読者に釈然としない重くひっかかる淋しさが心の空き部屋に居座ってしまった様だ。清朝末期の中国貧民たちにある、維持している生活以外への無関心や、自己本位な安易で愚かな手段での貧からの逃避がみえる。魯迅が狂人や愚鈍人を敢えて描いて、中国民衆の伝統的被支配層精神を揶揄して、民衆の精神進歩と先進文明化への導火線に火を点けたかったのであろう。「狂人日記」「阿Q正伝」での強迫観念や自己完結的価値観の取り方など中国貧民層の悪癖が、日本の江戸時代、ロシアの帝政期の農民を見る様だ。
2010/10/07
メルコ
中国のものを読んでみたいと思い手に取った。「狂人日記」「阿Q正伝」など13編を収録。はじめのうち難解でとっつきにくい内容だと感じられたが、次第に悲喜劇の世界観を愉しめるようになった。「祝福」「酒楼にて」「孤独者」など登場人物が巻き込まれる出来事の不条理さ、悲哀が余韻を残す。また「孔乙己」「阿Q正伝」などは社会の最底辺にいる人物があまりに救いがなく、あっけにとられた。ちょうど100年まえに書かれており、辛亥革命など歴史に弱いとピンとこないところがあった。とは言え中国の近代文学の礎となった作品群は一読に値する
2020/02/05
Nobu A
頂き本読了と言いたいところだが、何度か試みた後諦めた。コロナウイルス禍の中、どういう訳か気が散ってか、残念ながら本を置くまで面白さを感じなかった。考えてみたら英語の翻訳本は何冊も読んできた。中国語翻訳本は初めてのような気がする。気が向いたら書架から取り出し頁を再度捲ってみよう。筆者と翻訳者に申し訳なく、忍耐力のない自分が少々腹ただしい。
2020/03/24
刳森伸一
魯迅の3つの作品集から抜粋した傑作選。傑作選だけあって本当に良い短篇が並んでいる。魯迅ほどすんなりと庶民の側に立てる作家はそうそういないのではないかと思うほど、庶民の側に立って庶民を語っていて、庶民を啓蒙してやるというような嫌味がない。『阿Q正伝』や『狂人日記』のような代表作ももちろんいいが、個人的には『孤独者』の悲哀とやるせなさに心打たれた。
2019/10/08
ごうた
『街道を行く』で紹介されていた短編「藤野先生」を読んだ。明治初期に単身で中国から東北医学へ留学した魯迅を懇切丁寧に指導した藤野先生がいたことは同じ日本人として誇らしく思える。子孫によると、藤野先生自身は学問的に有名ではないらしい。だが、魯迅は小説を書くことで恩師の名を永遠に生かし続けた。それは彼なりの恩返しだったのだろう。だとすれば、とても粋な恩返しである。
2018/11/03
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