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日和下駄 (講談社文芸文庫 なN 1)

日和下駄 (講談社文芸文庫 なN 1)

日和下駄 (講談社文芸文庫 なN 1)

作家
永井荷風
川本三郎
出版社
講談社
発売日
1999-10-08
ISBN
9784061976856
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日和下駄 (講談社文芸文庫 なN 1) / 感想・レビュー

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HANA

日和下駄を履き片手には蝙蝠傘、荷風散人の東京散策を紙上で共にする。東京散策とは言いながらも具体的な旅行記事ではなく、市中に点在する樹木や寺院、路地に崖といった文物に対する随筆の様な趣。近代に背を向け江戸趣味を是とする。傍から見ると頑固そのものなのだけど、何故荷風散人といい百鬼園先生といい頑固な人が書く随筆はかくも面白いのだろう。それと視線が過去を向いているためか、自分の様な過去に郷愁を感じるような人間にとっては読んでいて非常に心地よい。漢文と江戸知識に裏打ちされた東京の一面、文明批評と共に面白く読めた。

2020/12/11

zirou1984

荷風ぶらぶら散歩譚。まずは30代で執筆されたとは思えない、頑なに古き東京の景色を愛そうとするその頑固で老成した姿に驚かさせられる。大戦景気が正に始まらんとする大正初期、誰もが色めき立って駆け足になる時代に荷風は独り散策を続け、見落とされた風景、見捨てられた路地に偏愛を注いでいた。『濹東綺譚』の時と同様、声に出す事で趣がより高まる日本語の流れが素晴しい。速読が流行し効率性が重視される現代において、のんびりと景色を眺めながら散歩する歩幅の如くゆっくりと音読を楽しむ行為は、それだけで一つの態度表明たり得るのだ。

2013/08/15

chanvesa

「東京なる都市の体裁、日本なる国家の体面に関するものを挙げたなら貧民窟の取払いよりも先ず市中諸処に立つ銅像の取除を急ぐが至当であろう。(82頁)」そう思う。オリムピックは町を解体していくのだろうか?一方で路地裏で耳にする清元から、「私の感覚と趣味と又思想とは、…次第に私を固陋偏狭ならしめ…(22頁)」という箇所には、荷風の趣味が懐古的な江戸風情に立場を置いていたことが強く感じるが、ここまで来るとイヤミすら感じる。長い歴史を俯瞰するタモリさんの視点の方が私には面白い。あの方は変化すら面白がっている気がする。

2017/06/15

長谷川透

明治から大正にかけて消え行く江戸の景色と新たに生まれる東京の景観。江戸の風情が失われるのを歎くけれども、だからこそ、小さくも残る古き時代の面影が一層愛おしいのではないか。荷風が見た東京は一世紀も前の姿で、現代に生きる我々は荷風が見た江戸の姿の僅かしか目にすることができない。しかしながら江戸の地形だけは荷風が生きた時代よりも前からほとんど変わっていない。小石川や根津や谷中、あのあたりの坂や崖は今なお貌を留めて残っている。消えてしまったのは日和下駄の音だけ。でも、耳を澄ませばその音も聞こえてくるかもしれない。

2013/08/10

tsu55

永井荷風の東京散策記。 川本三郎が解説のなかで荷風がいち散策者として東京の町を歩くことができたのは、東京が近代都市としての体裁を整えてきたからと指摘してるが、なるほどと思った。

2024/11/07

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