南回帰線 (講談社文芸文庫 ミB 1)
南回帰線 (講談社文芸文庫 ミB 1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
アナイス・ニンを愛人にしていたヘンリー・ミラー作品、お初。戦後、人間的な欠陥を抱えていると知っている主人公(=ヘンリー・ミラー?)は人員整理の仕事に就く。職場でのユダヤ人、黒人、障がい者、アウトローなどへの蔑みも篭った視点に戸惑っていたら、彼らに対する親愛や尊敬も出ていて一瞬、戸惑う。しかし、これは、建前と本音が全く、違う現代社会と素直な自分自身の社会への向き合い方への矛盾を如実に表しているのだろう。しかし、ブロードウェイをヴァギナに例えたり、女の子と即座に懇ろになったりするのはなんだかなぁ・・・(笑)
2017/05/07
拓也 ◆mOrYeBoQbw
長篇小説。実存主義。ロマン派文学。意識の流れ。ヘンリー・ミラーが29歳から電信会社で働いた話を中心に書かれた自伝的小説。その殆どが”意識の流れ”で書かれ、詩的ではあるが痛烈な言葉で世界やアメリカや会社を呪っている、筋の無い作品ですね。事実に当たる部分は、自分や知人の性遍歴か、死。作品の端から端まで”絶えず表現し続ける”スタイルでとんでもないエネルギーに溢れた文体。恥部や陰部、性行為などタブーを廃しながらも、ポルノ性を上回る文学的破壊力に圧倒されます。他にない読後感がおススメの一冊です(・ω・)ノシ
2018/11/27
うらなり
むつかしかった。何度か戻り読みをしてもよくわからない。南回帰線というタイトルも意味不明で、混沌を志向する作家とあるので収拾がつかない状態が本領なのか。
2020/12/28
mstr_kk
15年くらい前に途中まで読んでいたのを、このたび、通しで読みました。ひたっすら面白い、どこを取っても最高の、奇跡のような作品です。意味がわかるところも、まるでわからないところもありますが、つねに最高の面白さ。超長い詩だと思って読めば間違いないです。ちょっと前に『北回帰線』を読もうとして、まったく頭に入ってこなくて挫折したのですが、『南回帰線』は「わからなくても頭に入ってくる」作品です。読んでいると、いつも胸がいっぱいになって、あまり続けて一気には読めませんが。
2021/02/12
しんすけ
麻薬中毒者は犯罪者だが、スマホ中毒者は犯罪者とはならない。人に迷惑をかけるという点では後者のほうが格段に大きい。しかし下記ページによると原因はどちらも同じであるらしい。https://logmi.jp/business/articles/83043 社会的逸れ者である強迫観念が救済を求めて安易に手近なものに手を伸ばすのだ。確かに近年の状況は職場も学園も、横の連帯は40年前と比較してもかなり失われているのを実感する。まさしく現代は中毒社会とも云える。このような社会で中毒者を罰する権利が誰にあるのだろうか。
2019/03/18
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