成城だより 上 (講談社文芸文庫 おC 8)
成城だより 上 (講談社文芸文庫 おC 8) / 感想・レビュー
白義
老大作家70歳を過ぎてからの身辺雑記ながら知的好奇心旺盛という言葉では収まりきらないくらいエネルギッシュで好奇心の怪物というのがふさわしい活気。じゃりン子チエに感心し金八先生を太陽にほえろ!と比較してその出来に満足、音楽でも当時新鋭の中島みゆきに関心を持つ一方、地獄の黙示録にハマれば脚本を取り寄せ自力で考察し果てには闇の奥訳者の中野好夫に気になることを聞く、数学趣味が昂じて恩師のスタンダール翻訳の数学箇所のナンセンスさを指摘したり、柄谷行人のゲーデル濫用を腐すなど八面六臂、縦横無尽の知性の輝きに満ちている
2016/09/20
かふ
80年代の世相が書かれていて、面白かった。竹の子族は愛人をつくらない、とは仲間同士寝ないということなんだろうな。大岡の青春時代は坂口安吾の愛人との裏話が出てきたり、それを書かれて憤慨したり(その人に思いもあったが鼻にもかけられなかった)、逆取材を受けたり。あと「中原中也」の写真は修正が施されていて、目を大きくして少女っぽくしてるそうだ。本当は耳が尖って山羊みたいなんだ。それで『山羊の歌』。とにかく電話魔でわからないとすぐに知識人に電話して教えを請う。YMOに感動して、坂本龍一の父が教え子だから電話したり。
2021/07/16
モリータ
◆80-86年『文學界』連載の日録。休止を挟み三部に分かれる。記事の日付;Ⅰが79/11-80/10、Ⅱが82/1-12、Ⅲは85/1-12。81-86年刊単行本と19年刊中公文庫は三巻組。講談社文芸文庫01年刊(本書、上下巻)。◆大西巨人とのやり取りが知りたく上巻を積んでいたのを、下巻を仕入れたので読む。当該記事は91-93頁(『神聖喜劇』読後)、166-167頁(対談の感想)、193-194頁(谷崎賞辞退の顛末)、227-229頁(渡部「神聖な義務」批判)、433頁(『ながい旅』批評と小競り合い)。
2022/08/26
色々甚平
明治生まれで70年を越えた著者の日記エッセイ。ずっと本を読みまくっているのは驚異的。年のせいもあり、不調の日がほとんどなのはわかる程度に書かれているが、それくらいで抑えてあるので重くはない。それと知人友人の死去についても短い期間で割と数が多く感じられる。その中で、ニューミュージックが良いとかアバとか洋楽の方が好きやら、じゃりン子チエを読んで孫と話すやら、映画を見ての感想やらと新しいものへの抵抗感がないのは柔軟だった。また、戦争経験者が70年代当時の政治や世間の気配に対して色々書いてあるのも読みごたえあり。
2020/12/31
amanon
迫り来る老いを充分自覚しながら、それでも果敢に執筆活動、編集活動に携わり、世相についても一家言を放ち続ける著者の姿が印象的。特に左右のイデオロギーを越えたところで、かつて戦場に赴いた者として、戦争を起こそうとする愚を主張する姿には賞賛を送りたくなる。また、明治生まれでありながら、YMOや『じゃりン子チエ』、アバなどに理解を示すのにはちょっと驚き。こういうところにも明治生まれのしぶとさがあるのか?と思わされたりした。それから、幾多の文人とのやりとりやエピソードも勿論楽しい。下巻を読むのが楽しみである。
2013/03/25
感想・レビューをもっと見る