成城だより 下 (講談社文芸文庫 おC 9)
成城だより 下 (講談社文芸文庫 おC 9) / 感想・レビュー
かふ
70代も後半になってくるとそうとう身体的にも辛いようだ(70歳で始めたのが1980年から5年が過ぎていた)。同じ文章が繰り返されるのはあえてそのままにしたのか。そんな中でも新たなる興味を持とうとするのには頭が下がる。印象的なのは上野千鶴子の本を読んでいることだ。それも話題作の『スカート~』じゃなくて『構造主義の冒険』。「現実意識と可能意識」について、個人的な意識でも集団的に係わっていく構造、大岡昇平が15年問題にしてきたことをやっと同じ問題意識を持った人に出会えたと。大岡は文学から社会学に至った。
2021/07/21
白義
老境に入り体力の衰えを仔細に実感しながらもその感性衰えることはなく、萩尾望都や山岸凉子を読み少女漫画史に思いを馳せ、また対極的な少年漫画では北斗の拳から時代を読みとこうとする好奇心、バイタリティはむしろ若い読者をも圧倒するもの。文学においてもすでに昭和の終わりが近づき、地殻変動が起ころうとしている頃で、加藤典洋や石原千秋といった若い世代の仕事から批評の大きな変化を感じ取り、読書録は歴史に科学に小説とオールラウンド、まさしく知的なスーパーおじいちゃん日記ともいうべき日記文学の傑作。レベルの違う幅の広さである
2016/09/20
モリータ
◆'80-'86年『文學界』連載の日録。休止を挟み三部に分かれる。記事の日付;Ⅰが79/11-80/10、Ⅱが82/1-12、Ⅲは85/1-12。81-86年刊単行本と19年刊中公文庫は三巻組。講談社文芸文庫01年刊(本書、上下巻)。◆友川かずきの中原中也曲への言及があるかと思ったが、なし。◆「遠き外国のことなれど、(注:フランスは)一度は通過せし地なり。その地形の詳細を知るは楽し。その他ボードリヤール『象徴交換と死』筑摩書房(他書名中略)その他読むべき本多し。六十五年を読書にすごせし、わが一生、(続)
2024/09/23
人非人
いろんなことに興味を持てば、自分の人生もより良いものになるのだろうか。
2016/03/02
yunomi
この雑録からひしひしと感じるのは、友人達の死を看取り、衰えゆく身体を意識しながらも、まだ自分にはなすべき事がある、という作家の焦燥感である。最晩年の著者は『堺港攘夷始末』『ながい旅』といった小説を完成させる傍ら、『小説家夏目漱石』『わがスタンダール』など長年の懸案だった作家論もまとめている訳で、この他にも富永太郎全集の編纂にも尽力していたのだから驚くばかりだ。大岡昇平という作家の生き様が、本書にははっきりと刻印されている。
2015/03/09
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