上海游記・江南游記 (講談社文芸文庫 あH 2)
上海游記・江南游記 (講談社文芸文庫 あH 2) / 感想・レビュー
佐島楓
言葉の端々に中国への偏見が読み取れて、当時の知的エリートの認識はこのようなものか、ということがうかがえ、愉快な気持ちにはなれなかった。芥川は女性の耳フェチだったのだろうか。
2018/12/28
ヨーイチ
青空文庫にて上海游記、北京日記抄のみ読了。1921の訪れたチャイナの記録。清朝末期から日本敗戦辺りのチャイナ、コリアの記録は色々読んできたがどれの面白い。上海と北京の違いが何となく浮かび上がる。チャイナ服をまとい、パイプを加えながら要人から市政の下層民まで目を向ける。冷静な観察と斜に構えたコメントが芥川らしい。京劇、昆劇見物記が印象的。江戸時代の芝居小屋と比較したくなる。もっともチャイナでも「文明開化」が起こっているわけで、これでも近代的になっている筈だ。続く
2017/12/15
かふ
去年の年末にやったNHKドラマ『ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜』の原作。ドラマではいまいちわかりにくかったと思うのだが、この記事を書くことになったのは芥川が海軍大学の講師を辞めて大阪毎日新聞社に入社。その最初の記者としての仕事が「上海游記」だった。それは漱石と同じだったわけだが、明治の終わりと大正では社会情勢が幾分違っていた。でもこのルポルタージュはそれほど軍国主義的なというわけでもなく、ただ当時の大勢が日本人が中国人を蔑視していたということを考慮する必要がある。差別的な言葉が多く含まれている。
2020/02/05
月
この旅で古典的な風景(中国的風景)を探し求めた芥川が、この地で見たものは期待とは裏腹にすでにその伝統文化(人と風景)は翳り、まさに内憂外患の中国ではなかっただろうか。上海、江南、長江、そして北京、それぞれの地で芥川が何を思い何を感じたのか、谷崎とはまた違う感覚(視点)で、その眼に映る中国の姿が興味深い。紀行の風景・風物を精緻にみる複眼、その紀行文は芥川の魅力を充分に伝えてくれている。
2015/06/05
ハチアカデミー
C 芥川の歩いた大正期中国の風景が描かれる紀行文集。歴史書には描かれない、当時の上海や北京の諸相を見ることができる。また、自国・日本と対比し、支那の文句を言うあたりは、当時の日本人がどのようにアジア諸国を見ていたのかを知ることもできる。芥川の珍道中を楽しむこともできた。一種の明るさを持つ本書において、異質なのは「北京日記抄」。突然死刑の銃声が聞こえ、紫禁城を夢魔と見るラストが印象的。が、それまで。芥川が旅行記を書いたというもの以上では無かった。谷崎への言及が多かったのがどこか引っかかる。
2012/09/04
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