地唄・三婆 有吉佐和子作品集 (講談社文芸文庫 あM 1)
地唄・三婆 有吉佐和子作品集 (講談社文芸文庫 あM 1) / 感想・レビュー
そうたそ
★★★☆☆ 著者の作品は長編の方が好きだが、短編を収めた本作でももちろんその才能を感じることはできる。著者の名を広めることとなった初期の作「地唄」は、伝統芸能に生きる父娘の葛藤から和解までを描いた傑作。筋立てはシンプルだが、魅せ方がうまい。二十数歳でこれだけの作品を書いてしまうあたりに著者の凄さを感じる。芥川賞も直木賞も候補止まりだった著者は文壇では好まれる存在ではなかったようだが、「地唄」にかかわらず他の作品の出来の良さからしても、過小評価されていたように思えてならない。
2024/11/01
🍣
解説の掲載されたインタビューに著者が《「男が書きもらしているところを、女が書き改めなくてはいけないという意識」を常に持って作家活動をしてきた》とあり、本当に言葉足らずで申し訳ないけれど、ものすごい作家がいたんだとつくづく実感する。娘と父のわかりやすいけれど複雑で絶妙なやり取りや、少々の物悲しさと小気味好い毒気のある女性たちの日常など、硬筆だけど魅力的な文章にうっとりさせられる。『美っつい、庵主さん』『三婆』がお気に入り。講談社文芸文庫を初購入。
2021/08/28
rinrinkimkim
地唄の最初に梶川流と出てきた。と言うことは連舞・乱舞は本書のスピンオフ的存在だったのか?また地唄が断弦に膨れてゆくわけで興味深かった。三婆:最後のほうで「醜さが押さえても押さえても、体のあちこちからはみ出してくる」と言う表現がすごい。今でいう「ダダ漏れ」を有吉さんはこう表現してる。どれほど醜いか、抑えるではなく押さえるのですよ。そしてはみ出すのです。こういう言い回しがたまらなく魅力的で有吉作品から離れられないのです。次は針女
2017/04/03
AR読書記録
ものすごくうまい.ものすごく読ませる.どこの一文をとっても隙がないと思う.解説もしっかり読むべき.
2011/01/10
tamako
やっと読み終わった! 暑すぎて読書が捗らないことこの上ない。 この本は有吉佐和子の初期短編集で、解説も非常に丁寧な有吉佐和子論になっている。私は中学生の時から有吉佐和子を読んでいるが、長編ばかりだったので、切れの良い短編は非常に新鮮だった。フェミニズムとか社会問題の提起とかでエキセントリックなイメージもある作家だけど、この本からは、むしろ先入観無しの素直な感情が見える。三婆にしても、家長の早過ぎた死と復興の荒波と関係者の言動に、ただただ驚く気持ちが可笑しくて切ない。
2019/08/10
感想・レビューをもっと見る