沈黙のまわり: 谷川俊太郎エッセイ選 (講談社文芸文庫 たAA 1)
沈黙のまわり: 谷川俊太郎エッセイ選 (講談社文芸文庫 たAA 1) / 感想・レビュー
ケイ
谷川さんがここまで自分の考えや哲学を述べ推敲しているのを初めて読んだ。初期の文章は20代前半で、若者なりの有り余る情熱やあふれ出てくるものを思わず書いたようにみえる。しかし、若者が抱えがちな暗さや気負い、過剰な美意識などが見当たらない。そこに彼の詞の独特さを見るように思う。詞を生きる手段であるとも言い切り、詩で生活していく困難さを語るのは本来は俗であるはずなのに、彼の詞は純粋だ。その人が、本来の愛は肉欲を外すことは出来ず、愛には百万の恋文より一度のあいびきの方が大切だと言う。矛盾しているようだが、納得す
2014/05/22
寛生
【図書館】ものすごい本だった。まるで生まれたての赤ん坊をこの腕で抱きしめ、赤ん坊の息遣い、透き通った肌の色、母親の乳房の香を感じるような。何よりもそのヴォルナブルな体をそっと愛おしく抱きしめていたようでもあり、それは自分がどんなに暗闇で覆われていたとしてもその赤子の〈命〉のにおいにより、再び一歩踏み出す力を与えてくれるようでもあり。だが時には谷川の魂から血が噴き出し、その〈傷口〉は乾きはせず、反って彼の〈生と死〉へ勇敢に立ち続けているような姿をも想わせるような断片もあり。僕は谷川の血によって贖われていく。
2014/03/25
へくとぱすかる
谷川さんの詩の不思議な点は、時代を感じさせないところ。初期の作品から感じるのは、まさに時代を超えた、日本語の詩の一種のスタンダードに思えるところ。にもかかわらず、谷川さんのような作品を書いた人は他にそれまでいなかったし、これからもそんなに出てきそうにない。ベールのむこうの、隔絶された詩の世界を見るような文体(あくまで私の感じです)は、どこから来たのだろう。大岡さんとの対談はそんな作風を解くヒントになるかもしれない。
2015/11/25
佐島楓
この凛としたまっすぐさはなんだろう。書かれた当時まだ二十代なのに・・・。詩、ひいては芸術そのものに対する真摯な姿勢に強く惹かれた。迷っているときに読んだ本だったので、勇気づけられた。一歩ずつでも前進していかなければな、と思わされた。感謝。
2011/08/25
あなた
谷川の行っていることは、この上なくシンプルな逆立ちである。「逆立ち」したということでなく、ただ「単に」逆立ちをしたということが重要。それは逆立ちなので、「ないこと=喪失」からはじまることもある。でも、喪失よりももっともっとシンプルなことからはじまる。つまり、逆立ちさえも「ない」ような「単なる」こと。ただそれだけのことがすさまじく画期的な輻輳する風になった
2010/03/12
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