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幾度目かの最期 (講談社文芸文庫 くI 1)

幾度目かの最期 (講談社文芸文庫 くI 1)

幾度目かの最期 (講談社文芸文庫 くI 1)

作家
久坂葉子
久坂部羊
出版社
講談社
発売日
2005-12-10
ISBN
9784061984257
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幾度目かの最期 (講談社文芸文庫 くI 1) / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

百年文庫で読んだ表題作に衝撃を受け、早速、この短編集を手に入れました。解説の写真を見る限り、作者は快活そうなお嬢さんだ。しかし、この人が痛ましいまでの叫びと自制に満ちた支離滅裂な心情で亡くなったのだと知ると、写真をどう見て良いか、分からなくなる。活字倶楽部にも紹介された「落ちていく世界」もやっと、読むことができました。元財閥の子として自堕落に生きながらもその生活に先がない事を分かっている雪子の心情が痛ましい。一方で心配し、父の死にも一人、悼む雪子に対し、投げやりな進次郎の言動に腹が立って仕方ない。

2018/09/07

ヨコツ

若さ故の瑞々しい感性を、触れれば折れてしまう程に鋭く研ぎ澄まして辿り着いた先の文学。惜しい才能を亡くしたと思う反面、命を投げ打たなければここまでの作品が書かれることは無かったのかもしれないとも思う。人一倍強烈な感情を持ちながらその出口が極めて狭く、そうして細く細く絞り込まれた圧倒的な火力で焼き付けられた言葉達は、だからこそここまで強く深く人の心に刻み込まれるのだ。自伝的小説『灰色の記憶』は非常に共感できる内容だったのだけれど、最近僕はこんなのばかりに共感していて一社会人としてどうなのかたいへん疑問である。

2015/07/03

coco.

戦後没落した川崎財閥令嬢の作家・久坂葉子の作品集。表題作は、私小説と呼ぶよりも死の当日まで心情を赤裸々に綴った遺稿。数人の異性関係を重ね、筆任せに走り書きされた女性の心情は生々しく、熱量が激しい。勢いのまま読み切ってしまった。煙草を喫い、深酒をするなど女性にしては不良気味だが、クラシックのレコード、ジャズとモダンな嗜み。21歳で夭折したので、全編とも似たり寄ったりの設定だが、躾が厳しい著者の出自柄か、異性を比喩で例えるなど言葉遣いは、美しかった。芥川賞候補作家と文字の如く破天荒な人生を地で生きた女性。

2014/12/16

不見木 叫

久坂葉子さん初読了。死の香りがある意味では探偵小説以上に強く、それでいて儚さよりも強さを感じる文章。太宰治『斜陽』にも似た『落ちてゆく世界』、遺書を読んでいるような表題作、ミステリ的な雰囲気のある『女』、仄暗い青春小説『灰色の記憶』と佳作揃い。

2023/12/25

メタボン

☆☆☆☆ 痛々しい。良く言えないが感傷的な「文学少女」の時期を乗り越えられずに死にかられ疾走してしまった、という印象を受ける。写真の笑顔と、痛々しい文体とがどうにも結びつかない。「灰色の記憶」のプロローグに見られる感性はすごい。「私は、いろんなものを持っている。そのいろんなものは、私を苦しめるために活躍した。私の眼は、世間や自然を見て、私をかなしませた。私の手足も徒労にすぎないことばかりを行って、私をがっかりさせた。考えるという働きも、私を恐怖の淵につれてゆき、さかんに燃えたり、或いは、静寂になったりする

2015/04/26

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