若い荒地 (講談社文芸文庫)
若い荒地 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー
無識者
エリオットを教科書に、既存の詩とは別のものを作っていこうと言う若い人たちの試みがすごいエネルギッシュである。鮎川信夫の「三好達治の義古典主義作詩法をただちにニセモノと感じたのも、あえて言えばエリオットのおかげである」という部分が印象的だった。自分の感性を信じていけるところがやっぱり詩人なのかもしれない。エリオットそのうち読みたい
2018/10/15
misui
戦後詩を牽引した「荒地」の前身となった戦前戦中の詩誌を中心に詩人たちの群像を描く。モダニズムに影響されてスタートし独自の詩を展開していった輝跡が、暗い世相でありながら熱をもって迫ってくる。無軌道さと生真面目さはいかにも青春という感じで気恥ずかしい、でも彼らにしてみれば泥を啜るような日々だったのだろう。「時代の意味と個人的体験の意味とは、かならずしも一致するものではない。時代が暗ければ暗いなりに青春はくるおしい夢を孕んでしまっていて、私たちの精神は、誰にも攻略されない幻の築城術に熱中していた。」(鮎川信夫)
2015/05/19
ロータス
歳を取っているためか、この本に出てくる詩人たちの詩も詩論も生き方も若くて青くて真っ直ぐで、それが読んでいてつらい。現代詩のことはよく知らないが、鮎川信夫や田村隆一らの詩はちょっとセンチメンタルすぎるきらいがあり、自分の好みではなかった。現代詩の歴史を知る上では格好の資料だと思う。
2020/12/09
刻青
田村隆一の目を通した「荒地」前夜。言葉遊びを脱しないモダニズム詩が、森川、鮎川、牧野を皮切りに、徐々に音楽的に、一種の雰囲気を纏うのがはっきりと見て取れる。また当時の異常な雰囲気を、若き詩人たちがどう捉えていたかもわかり、非常に面白かった。言葉すら残らなくなる中で、詩はどう変わっていくか。鮎川の知と潔癖、激しさは、詩を急激に変貌させ、最後にはほぼ完成形である。田村はあと少し。牧野、森川のように「美しく発狂」するまで。 「僕には もう言葉が聞えない ただ 音だけが 河の流れのやうに 僕の胸を抜けてゆく」
2022/01/22
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