花園の迷宮
花園の迷宮 / 感想・レビュー
キキとジジ
廓話に興味があって読み始めたが、江戸、明治の時代の話とは趣向が違い、舞台が昭和の横浜。第二次世界大戦が始まる寸前の危うい世の妖艶な世界観。甘美と主人公のふみの素朴な人物像のギャップが面白い。この時代、この土地の風景に思いを馳せる。
2014/12/01
KJ
戦争前夜に漂う不穏な雰囲気。身売りされた少女の過酷な運命。女郎として生きる為の覚悟。謎を秘めた遊廓が陰惨である程に健気な少女の奮闘が際立つ。遊里を通して透けて見える当時の日本。戦争の思惑や政治の欺瞞。社会の不平等や人間の強欲には普遍性がある。暗い時代にこそ夢が必要だ。此処ではない何処かを夢見る人々にとって満洲という場所が与えた意味に思いを馳せる。誰もが生きる事に懸命だった。必死な想いが招いた不幸な事件。仮初の巨富を入手しても罪の土台の上に成る幸福は脆い。自身の足で逞しい一歩を踏み出す少女の姿に希望を見た。
2022/12/16
かぐや.
昭和7年。遊郭の内情を描いているのに、生臭くなく読み進められた。小説だけど、日本には確かにこんな歴史があるのだと確かに感じられた。その時代から100年も経っていない現在では信じられない出来事なのに。ふみの聡明で強い性格、流されるのではなく考えながら生きると言うのは現代でも大切なことだと思う。ミステリーとしても面白くまさかの結末だった。
2018/11/25
moonanddai
乱歩賞に特段興味を持っているわけではありませんが、気がつくと、これまでにもいくつか読んできました。ある意味その作家さんの「デビュー作」でもありますが、やはりレベルは高いものだと思います。このころは赤川次郎氏が選考委員に入っていたのですね。何となく赤川タッチの作品だとも思いました、「実は…」といった人間関係や話の進め方(会話での展開)などなど。
2016/03/21
Ki
日中戦争前の混乱した時期に遊郭で起こった事件を健気で一生懸命な少女ふみが解決する。妖しくて危うさをもつ遊郭の世界と辛さを抱えながら働く娼妓達が切なくなるような魅力
2016/12/12
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