ワイルド・スワン 下
ワイルド・スワン 下 / 感想・レビュー
優希
人間の醜い感情が剥き出しになっているように感じました。何かを愛でる気持ちすら失わせる文化大革命を軸に語られる物語には凄まじい狂気を見ずにはいられません。苛酷で破滅的な状況下の中国。暴力が社会的に認知された国と言っても過言ではないでしょう。その理不尽さは想像を超えていました。著者は留学して世界を見たことで初めて自由を手にしたのだと思います。その目で自国を広い視野で眺めて書いた作品。極限的な国の状況に色々考えさせられました。
2016/01/31
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
1965年に始まった文化大革命。権力の座に留まろうとする毛沢東。政敵を抹消すべく吹き荒れる粛清の嵐。貴重な文化財は破壊され、書物は焼かれ、街路には拷問される人の絶叫が響きわたる。裏切り、密告、人々が恐怖に怯えて暮らす日々。嫉妬や怨恨という人間の醜い感情を巧みに利用した恐怖政治。思い浮かぶのはジョージ・オーウェルの「1984年」の世界。だが、これは実際に隣の国で起こっていたことなのだ。あまりにも多くの人々が迫害され、処刑され、或いは自らその命を絶った。淡々とつづられている文章だけにより恐怖が増した。★★★★
2016/10/22
aqua_33
再読。昨日の友が今日の敵になり、迫害していた側が迫害される側になる。毛沢東時代の中国は本当に地獄と言っても過言でない。毛沢東の言葉を借りて私怨を晴らす国民性にもウンザリ。読んでて腹立たしいけど、知識として取り入れるのは、まあいいことかなと。文化大革命、私が生まれた年にもまだ続いていたなんて、どれだけ中国は遅れていたんだというのが率直な感想。《2019年24冊目》
2019/09/06
たかしくん。
下巻は、文化大革命こと「毛沢東自身の権力を強化するための血なまぐさい粛清」の様子が、これでもかこれでもか、と続きます。公平な世の中を作りたかった筈の父の発狂初め、親族・知人の「迫害致死」に対する恐怖と苦痛の数々、どこかフランクルの「夜と霧」に通じるものを感じます。毛沢東思想の根幹は、「人と人との闘争こそが歴史を前進させ、そのためには絶えず大量の「階級敵人」を製造し続けること」と結論づけた著者の考察には、自身の辛い経験に裏打ちされた説得力があり、ますますやり切れない思いが残りました。
2014/11/24
Willie the Wildcat
1965-1978の後半。国民の期待を背負った共産党政権成立。待っていたのは「思想改造」の名の下の様々な統制。人間の本質の”暗”部分をさらけ出す。人間の尊厳とは何かを問われる。「八・二六」と「紅成」との対立軸の不可解さ。全国民が心に傷を追ったのではないかと推察。自然と普段の何気ない”自由”に感謝を感じる。中国近代史を実際に生きぬいた一市民の視点から学ぶことができた。世の中知らないことが多いなぁ。
2011/10/13
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