クレーの絵本
クレーの絵本 / 感想・レビュー
シナモン
図書館本。不思議な感じのクレーの絵と谷川俊太郎さんの詩のコラボレーション。「かわりにしんでくれるひとがいないので わたしはじぶんでしなねばならない だれのほねでもない わたしはわたしのほねになる かなしみ かわのながれ ひとびとのおしゃべり あさつゆにぬれたくものす そのどれひとつとして わたしはたずさえていくことができない せめてすきなうただけは きこえていてはくれぬだろうか わたしのほねのみみに」胸に響いた。色合いが素敵なクレーの絵ももっと観たくなりました。
2020/04/07
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
クレーとモーツァルト。谷川俊太郎氏は若い頃から、この二人の芸術家の創造物に促されながら詩を書いてきたという。一般的な評価とは異なり「クレーの絵は抽象ではない」と谷川氏はいう。「言葉になる以前のイメージ、あるいはイメージによって秩序を与えられた世界」であり、「そのような世界に住む事ができるのは肉体や精神ではなく、魂だ」と。「かいだんのうえのこどもにきみはなにもあたえることができない。しぬことができるだけだ」(階段の上の子供)など平仮名で描かれた鮮烈な死のイメージ。クレーの絵画40点を収録した詩集。
2016/05/12
アキ
アーティゾン美術館で『パウル・クレー展』を見た。2019年24点のコレクションを収蔵したため、既収蔵の「島」を含め25点の展覧が可能となった。この絵本は谷川俊太郎がクレーの絵に詩を載せたもの。クレーの絵は抽象画のようでいて、象形や色彩が独特である。分析や解説ではなく、詩ということばに変換することで絵のこころを示している。表紙にある『黄金の魚』の詩がいい。「どんなよろこびのふかいうみにもひとつぶのなみだがとけていないということはない」本質は、時代を超えて響き合う。それにあずかれるのは鑑賞者の幸せである。
2020/07/08
greenish 🌿
クレーの幻想的でありながら重厚感のある色彩世界に谷川俊太郎が情感溢れる詩を重ねた詩画集 ---谷川さんが「若いころからクレーの絵に促されて詩を書いてきた」というのが納得できるほど、心の奥底に訴えかけてくるものを感じます。 表紙にもなった《黄金の魚》・・・ひとつぶのなみだが/とけていないということはない。《あやつり人形劇場》・・・あやつられているとしっているから/きみはよるそんなにもふかくねむる。 この画と詩の融合に、いつまでも浸っていたい気持ちになりました。
2014/06/22
ちはや@灯れ松明の火
一切を削ぎおとした線画の中から、幾重に塗りかさねられた色彩の奥から、あのひとがかくした声を探り当てようとしても見つからない。丸みをおびた文字を連ねて、鎖のように紡いだことのはも、あのひとの見たものをそのまま写しとったわけではない。深い青の海にとけた金のなみだをあなたは思う。静けさの腕がだきとめた叫びにあなたは胸をいためる。黄色い鳥のはばたきの音にあなただけが知る世界を見いだす。あのひととあなたはひとつにはならない。あらそうこともなく、たちきられることもなく、ただいつまでもどこまでもむすばれているだけだ。
2014/02/26
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