群衆の悪魔: デュパン第四の事件
群衆の悪魔: デュパン第四の事件 / 感想・レビュー
燃えつきた棒
笠井潔は、国内で最も好きなミステリー作家だ。 中でも特に好きなのが、『哲学者の密室』と、僕をベンヤミンへと導いてくれた本作だ。 ちょうどベンヤミンの『パサージュ論』を読んでいるので、久しぶりに紐解いてみた。/ 二月のある夜、一人の新聞記者が、キャピュシーヌ通りで軍隊と対峙していた群衆の渦中で、謎の男に射殺された。 事件を目撃したシャルル青年は、真犯人探しをオーギュスト・デュパンに依頼する。 その事件を調査する過程で、デュパンに人探しを依頼してきたモンテルラン夫人が、二人の訪問中に、密室で毒殺される。
2021/10/19
のえる
読み応え抜群でした!ポーのパスティーシュとしては作風の再現性は低いものの、キャラクターと実在の人物・史実を活かした念入りな構成は本当に面白かったです。蘊蓄や社会情勢についての講釈は確かに長いけど割と読みやすく、しっかりのめりこんでしまいました。事件と推理の側面もあるけれど、正直それ以外の側面の方が魅力かな…歴史小説を読んだ経験がなかったのでなおのこと興味深く、勉強にもなりました。満足感、そして何より達成感!
2020/11/21
ぽこぺん
あちこちにちりばめられたポーの物語によくこんなに盛り込んで書いたなあと愛を感じました。最近、あちこちで革命がありましたけど、その後を見ると本当に大変なのはその先なんですね。
2014/07/06
四四三屋
ポーの名探偵デュパンの第四の事件という設定の本書では、フランスの二月革命に材を取り、ボードレール、バルザック、マルクスなど実在の人物を配しています。二月革命における群衆の蜂起が一発の銃弾によって引き起こされたシーンからはじまる本書は、その犯人を追及する中で、個を消滅させた或いは消滅してしまう「群衆」が立ち現れてくる展開はかなり興奮しました。この「群衆」に犯罪の根元を求めたことに本書の特筆すべき点がある。ただ、単純なミステリと考えたときには、その密室の構造、その謎解きについてはやや難があるような気がします。
2012/10/29
てっちゃん
1996年10月31日に読了
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