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増殖商店街

増殖商店街

増殖商店街

作家
笙野頼子
出版社
講談社
発売日
1995-11-01
ISBN
9784062078993
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増殖商店街 / 感想・レビュー

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踊る猫

夢と日常を往還するという所作を笙野氏は自家薬籠中の物としてしまったかのようだ。実際にこの作品集では夢と日常の混在する状況から生まれるカオスがこの上なく冷徹な筆致に依って描かれている。筒井康隆氏をも髣髴とさせるその自在な筆致に酔い痴れることが出来て、とても幸せな読書体験を過ごせたと思う。ただ、やや自己模倣に陥って来ているのではないかといらぬ心配をしてしまうのもまた確かなのだった。あと、自分が猫を飼ったことがないのもこの作品集に今ひとつのめり込めない原因なのかもしれない、と。さて、次は『母の発達』を読もうかな

2016/04/25

あ げ こ

日々の生活に於いて生じた細やかな欲望。たまりに溜まった疲れと精神的ダメージ。向けられた悪意の正体。その土地に感じる空気の種類。夢として描かれる歪んだイメージの中に、たっぷりと含まれた現実に対する皮肉。その容赦の無さがたまらなく心地よい。生き抜く為に必要とした現実逃避。まっとうな振りをした人間の陰湿な本性を暴く、危うい夢の正しさと、負の要素だけを異常に膨らませた記憶に感じる強烈な闇の印象。だが逃避先である夢は、それを上回る程の破壊力を誇る。ハチャメチャな夢の中で不意に出くわす、律儀な現実感が妙に可笑しい。

2013/12/11

G

再読。大学の図書館で読んで以来。猫を探すお話の、子供の描写が心に残っていたけど、読み返してみると以前ほど腹立たしく感じない。そのせいで主人公がどれだけ猫を求めていたのかが前よりもよく分かるような気がする。『虎の襖』がお気に入り

2014/11/19

くままつ

ころころと態度を変える世間に、猫を連れてワープロを叩き立ち向かう。この人が戦い続けられるのは、後ろに守るべき家族がいるからなのかなーと思う。愛の為せる業、なのか。猫を愛する「私」は何時の間にか母だなあ。

2012/10/14

くさてる

秀逸な作品集。「増殖商店街」は夢と現の境目が現れては溶け、溶解しては覚醒し、というリズムがたまらなく快感です。良い夢とも悪夢ともつかぬ、つまりはわたしたちが毎晩、あるいは日々のうたたねの際に感じる夢の現実感のなさを、たゆたわせてくれるのです。愛猫を捜し求める作者の行動があまりに痛々しくて直視するのが辛かった「こんな仕事はこれで最後にする」と、本当の意味で精神を病んだ青年の生活が淡々と描かれて読んでるこちらが悪夢を見てるような「柘榴の底」が印象に残りました。

2006/05/09

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