ゴットハルト鉄道
ゴットハルト鉄道 / 感想・レビュー
YO)))
ゴットハルト鉄道に乗りたくなりました。言葉の世界を存分に遊びながらも、時々生ま(エロス)な表現が出てきてはっとしたり。「無精卵」はもう少し粘度の高い感じ。一つずつ言葉を使うことをやめてしまうのは、白線の上だけを歩いて帰る、みたいな、小学生の"自分ルール"のような他愛ない行為なのか、それとも、世界との繋がりを捨て去っていく、重大で危険な行為なのか。
2013/12/20
jun_dm
/『無精卵』/毎週通えば、いつか女も折れるだろうと従弟は思った。あのファイルさえ自分のものとして把握できれば、急に遠ざかってしまった女の身体だけではなく、昔つかめそうでつかみそこねた小説のアイデアがもどってきそうな気がした。やっぱり何か小説のようなものを書いてみたい。あのファイルを開くと、急にそんな気持ちになる。まるで魔法の小箱のようだ。それでいて、閉じた途端に内容は忘れてしまう。/
2021/12/04
H
このみで語ってよいのならば、「無精卵」が好き。「男はあっけなく死んでしまった。それに対して少女は私たちよりも長く生き延びるだろう。」大きいものよりも小さいものへの志向を感じる。普段の多和田さんの短編よりもやわらかく、読みやすい。否定されがちな、幼児のころの性感覚を思い出すための過程が辿られていく。
2015/10/19
hf
気違いっぽくて面白かった(金原ひとみ「憂鬱たち」を思い出す)。この気違いじみた感じが不条理ということで、カフカ(「判決」しか読んでない)ってこの感じの元祖なんだろうか。大人の女が野性的な少女に危害を加えられる話は、吉田知子ってこんな感じだったかなと思った。社会不適合っぽい女の人が出てくる話は森万紀子を想起した。収録作の初出雑誌の号数は「ゴットハルト鉄道」1995.11, 「無精卵」1995.1, 「隅田川の皺男」1994.1 で、単行本は1996年に刊行され、講談社文芸文庫に入ったのは2005年らしい。
2023/01/20
たりらりらん
「ゴットハルト鉄道」「無精卵」「隅田川の皺男」の3編収録。いずれも言葉と身体が信頼できるものという概念をこわしていくように語られていく。無精卵は、特に内容が濃厚。ある日、女のもとに少女が訪ねてくる。追い返す理由が見つからないので、女は少女をそのまま招き入れる。女は、外から侵入されてくるような不安をさまざまな人に抱き、外部者は少女と女の関係を誤解したままラストに向かう。なんだか読み終えた後、ぽかーんとしてしまいます。私は単行本で読みましたが、講談社文芸文庫の方が手に入りやすいようです。
2010/10/20
感想・レビューをもっと見る