黒髪
黒髪 / 感想・レビュー
安南
バラバラ殺人事件の被害者の黒髪はどこに消えたのか。語り手の「私」は「これは小説ではない」と何度も強調しているのだが…殺人事件のルポと友人の遺した論考から、文学史から失われた「黒髪」を探し出す「小説」。この入れ子になっている論考が以前読んだ『熊野でプルーストを読む』のなかの一章をまるまる使っていて少し残念。「小説」の方を先に読んでいたら新鮮に楽しめただろう。黒髪とは、ここでは、花柳小説もしくは玄人の女たちのこと。近松秋江、大岡昇平の小説『黒髪』の系譜を継ぐものとしてこの小説は書かれた。
2013/05/24
内島菫
「黒髪」の、日本文学史の中の黒髪を追った作中講義「黒髪考」は面白かったが、それを前後で挟んでいるバラバラ殺人事件はなくてもいいと思った。最終ページの黒髪の声のシーンは印象深くイメージも鮮明に喚起されるが、その分、黒髪の歴史が少々軽くなったような気もする。「十三月」は確かに「銀河鉄道の夜」入ってますね。生者の中に死者である主人公が紛れ込んだのか、主人公を含めみな死んだように生きる者たちの集まりなのかは定かではないけれど。ただ、好きなタイプの小説ではなかった。男と女の会話は安っぽいドラマのようだし、(→)
2016/10/20
kuukazoo
面白かった。辻原登はいつ読んでも手練れである。1996年初出の表題作とそれより約10年前の初期作品『十三月』の2篇。表題作『黒髪』はバラバラ殺人事件の新聞や週刊誌の記事の羅列の途中で突然日本文学史における「黒髪」の位置づけについての講義録が挿入される。「これは小説ではない。事実の記録だ」とわざわざ書いてあるあたりが既に怪しい(笑)。小説らしさはどこにもないのに小説の匂いが立ち上ってくるのは一体どういう理由なのか。『十三月』はデビュー作の『犬かけて』と似た感じ。
2019/01/17
fantasy
バラバラ殺人事件の記録、「黒髪考」と題した大学の講義、すべて小説ではなく事実の結果をノートしている。私は小説が読みたいので今回はパス。
2013/04/03
にっつぁん
所収の『十三月』は、『銀河鉄道の夜』入ってるのかなぁ…
2011/07/08
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