ひどい感じ-父・井上光晴
ひどい感じ-父・井上光晴 / 感想・レビュー
なゆ
「あちらにいる鬼」からのつられ読み。あれだけ好き勝手にふるまう父親でありながら、諦めきってしまうでもなく、チチとして家族から最期まで愛されていたのだなあ。そしてそれは、お母様の力あってのものだということ。寂聴さんの名も何度か出るが、意味深ではない。興味深かったのは、荒野さんが作家になってからの関係。“奇妙なことだが、小説を介すると、小説家の父はなりをひそめて、娘に甘い普通の父親が登場するようなのだ”。光晴氏愛用のノートをもらいに行ったとき毎回する儀式。“私と父のひみつの時間”。そういう記憶は、宝物だ。
2019/07/29
あつこんぐ
図書館本。『あちらにいる鬼』を読み、モデルになった井上光晴とはどんな人物だったのか気になり借りてきた。荒野さんの作品は同人誌の頃から全て目を通し、1度もダメだしせず、褒めるところがなくても無理やり見つけて褒めていたというエピソードが親バカ全開で微笑ましい。娘から見た光晴氏は意外と良い父親だったんだなぁと思う。そして、所々挟まれる井上光晴の詩や文を読んで作家井上光晴にますます興味をもった。光晴氏の本もちゃんと読んでみようと思う。
2021/12/11
あいくん
☆☆☆☆林芙美子文学賞授賞式で井上荒野さんの講演会があるというので、荒野さんの作品をいくつか読みました。講演会には結局行けませんでした。このエッセイには井上荒野さん自身のことも語られています。荒野さんは2001年に古書店主の夫と結婚しています。 荒野さんには子どもがいなくて夫と二人きりの生活です。荒野さんは結婚する前は恋多き人だったようです。 「歴代の恋人」というせりふはなんだかうらやましいです。 「荒野」という名前は本名です。父・光晴氏がつけたのです。これは「普通に生きるな」というメッセージです。
2017/02/26
relaxopenenjoy
「作家のおやつ」で知った井上光晴氏。作家の井上荒野(あれの)さんはそのお嬢さん(長女)。ご自分のお父さんに対して、ある種、距離感を持って、決してセンチメンタルにならず、冷静に綴る感じ。崎戸(長崎県の島にあり、昔炭鉱で栄えた)や佐世保の紀行もおもしろい。文中で、お父さんのお墓の下り(寂聴さんの紹介により岩手県のお寺にお墓を持った)があったが、光晴氏は瀬戸内寂聴さんと関係があったと読後知った。
2022/02/28
ほっそ
荒野さんが、本名と知り、驚きました。お父様やお母様の経歴も知り、なかなか面白かったです。 後半のほうはお父様の闘病記も兼ねていました。病気は癌だったそうですが、ひたすら「手術できればなおる」と信じていたことが語られていました。家族はそういうスパイラルにはまっていしまうんですね。
2014/11/18
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