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憂い顔の童子

憂い顔の童子

憂い顔の童子

作家
大江健三郎
出版社
講談社
発売日
2002-09-30
ISBN
9784062114653
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憂い顔の童子 / 感想・レビュー

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すみれ

長江の人となりやこの作品そのものについても語り、全編通してドン・キホーテになぞりもするローズさんの存在はとても面白い。長江が自身をどのように捉えているのかという視点が入っての展開となっているので。が、事実がフレームになった虚構の世界は、故郷からの冷たい視線や仕打ち、真剣なごっこ遊びでの大怪我、挙句生死の彷徨いとなり、虚実の重なりの程度は知らないが、痛々しい。童子の存在と共に「殺しあったものたち、殺されあったものたちゆるせよ」の述懐は重々しく響く。ラストの「二度とそれはないだろう」の「それ」って何ですか?

2019/07/21

かふ

『取り替え子(チェンジリング)』の続編であり「おかしな二人組」三部作の二作目。それは「世界文学」である『ドン・キホーテ』をパロディとするサンチョ・パンサがローズさんであり、ドン・キホーテが大江健三郎の分身の古義人であるというメタフィクションなのである。それは古義人の母が言う「小説は嘘を書くもの」というフィクションなのだ。四国出身の作家が四国の人々を敵に回すという構造であり、それは「童子(消えた子供)」になれなかった作家の幻想なのである。そこに死者たち(消滅していくもの)に対するオマージュがある。

2023/07/30

梟をめぐる読書

現実とフィクションの位相を無限に反転させ、読者を戸惑わせた問題作『取り替え子』の続篇だが、作品全体の舞台が馴染みの「四国の谷間の森」に固定されていること、またそこで展開される物語の全篇が『ドン・キホーテ』の冒険に擬せられていることで、小説として非常に読みやすくなってはいる。とはいえ、それを根拠に大江がメタフィクションとしての〝企み〟を放棄してしまったと見るのは大きな間違いで、この作品において彼の「故郷の森」は遂に三重化してしまったのであり、また終章付近には実在の文芸評論家「加藤典洋」との対決が待つ。

2013/01/20

フリウリ

コギトさんの怒りっぽさや衝動性は老人性のアレ?と思いつつ、田舎の人の、それもおじさんの、またはおじさん化したおばさんの、「油断ならない、悪意もこもった機嫌のよさ」との対決が繰り返し描かれ、気の毒になりますが、コギトさんはこれらと対決するために田舎に戻り小説が書けている「ドン・キホーテ」なのだから、同情はしません。「取り替え子」に引き続き、バルトの引用(「読みなおす」こととは、全体の構造を視野に入れて読むことであり、これにより本のなかにさまようことから、方向をもった探究に転じられる)が、何度か出てきます。8

2023/12/10

matfalcon

この本を読んでいると同僚から「原発反対してるやつやな。」「はい、ノーベル文学賞を受賞した作家ですが。」「え、作家やったんか?」んーん、やんぬるかな。縁なき衆生は度し難し。

2017/01/23

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