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オデット

オデット

オデット

作家
ロナルド・ファーバンク
柳瀬尚紀
山本容子
出版社
講談社
発売日
2005-12-01
ISBN
9784062117982
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オデット / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

作者のファーバンクも画の山本容子も、今までは知らなかった。ファーバンクは他の作品としては『人工皇女』が訳出されているくらいで、あまり知られていない。山本容子は、吉本ばななの『TUGUMI』の装丁をした人らしい。そういえば、こんなだった。さて、物語はきわめてシンプルで驚きはないが、予定調和の美しさが支配する。副題の「けだるい大人のための童話」は、なんだか心に痛みを伴うものだ。なお、挿画、装丁は全体としてこれもよく調和を保ち、ちょっとウイリアム・モリスを思わせるもの。

2013/04/18

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

清らかな薔薇園の先に暮れなずむ濃紫の街々を見ていた。あそこにはどんな美しいものがあるのだろう。ときめかせて。小鳥たちとお祈りをしてあたたかな膝で眠りにつく。 馨しい月下の薔薇をつんで聖母マリアの御使いとなった夜、少女はあざやかに大人になった。人生は夢ではない。そう覚ったとき、無垢な翼は霧となった。 知らない世界にはもう戻れない。けれどしらじらと澄んだ朝、女にとってたしかに少女は天使だったのだ。人生でいちばん美しいものを胸に、地に降りたつ。世界は残酷で、でも知らない夜より輝いていた。

2019/11/29

優希

お気に入りさんから辿り着きました。マリア様に会いたいと城を出た少女・オデット。現実の厳しさを知り、少し大人になりますが、心は愛に満ちているのが美しいと思いました。マリア様に出会いに行くことが大人に足を踏み入れることだとしたら、これほど素敵なことはないでしょう。自分がイエス様に会うために教会へ足を踏み入れた日が懐かしく思い出され、オデットの姿と重なります。綺麗な物語に包まれていく感じがして夢心地になりました。挿絵の銅版画にも魅せられます。

2015/11/16

かりさ

純真無垢な夢見る少女が、聖母マリア様に会いたいと出かけた或る夜、現実の厳しさを目の当たりにし、少女から大人への歩を踏み入れた一夜を幻想的に描いた物語。柳瀬尚紀さんの綺麗な翻訳、山本容子さんの薔薇の装画、物語に添えられた銅版画がとても美しくうっとり。美しい月下の庭園、月明かりを浴びて妖しく輝く薔薇の花々、全てが夢のようにきらめいていた世界は、灰色の城へと戻ってゆく少女の目にどう変わってしまったのか。人生とは…と悟る少女にはやがて知りえぬ事も感じ取るのだろう。最後の一文は成長の証と重なるのでしょう。

2015/10/20

mii22.

たとえば少年が青年へ変化する瞬間があるように、幼い無垢な少女が大人の領域へ一歩踏み出す瞬間がある。大人の女性が誰もが通ってきた道だ。とても可愛らしく美しくそして残酷で胸を突かれる物語だ。人生は夢ではないと悟ることは、むごい事であり悲しい事であるけれど、それが真理と受け止めなければ生きてはいけない。ほんとうに胸を突かれた。はっとさせられた。

2018/06/15

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