FUTON
FUTON / 感想・レビュー
クリママ
アメリカの大学の日本文学研究者であるデイブ書くところの「打ち直した『蒲団』」の中年の作家時雄に、心臓にペースメーカーをいれた92歳のウメキチ、そして、46歳のデイブが重なる。「恋をして、おたおたしている男」、懊悩する男達。花袋の『蒲団』は未読だが、打ち直された『蒲団』には、時雄の妻美穂の気持ちが描かれ、その上にトウキョウ、戦後の混乱期、介護、画家の気持ち等々が入り組む。複層的なこの作品が中島京子の処女作とは。凄いな。ブンガクだ。
2018/07/19
ぶんこ
「布団の打ち直し」と本文が交互に出てきて、読みにくかったのを我慢して読み続けると、デイブと時雄、エミと芳子が重なり、やっと中年男性がが若い女の子に振り回される話と分かりました。 どちらの登場人物にも共感出来ず、どんな時代にも転がっている物語。 エミとユウキの言葉遣いにため息。 どうにも相性の悪い小説でした。
2015/11/27
ベル@bell-zou
時雄がデイブで、田中がユウキ。それを惑わす女=芳子はエミ。まんまと惑わされてる男の考察するバカな男の『蒲団』という日本文学。バカな男の入れ子みたいな物語だ。『蒲団』では、ただ従順なだけの妻でしかない美穂の心情が描かれ実に面白い。ウメキチを描こうとしていたイズミの”色んな顔を持っているトウキョウ”の考察がこの物語の女たちを表しているよう。デイブの元妻の『蒲団』の感想が、最高に笑えた。田山花袋『蒲団』あっての『FUTON』。組布団で薦めてくれた読友さんに感謝。私なら、蒲団は"捨てる"な。キモイもん。(笑)
2018/03/31
ぬらりひょん
中島京子さん初の書き下ろし、かなりの力作だと思います。図書館で借りた本が2003年発行なのに昭和かというほど黄ばんでおり、しかも田山花袋の「蒲団」を下地にした小説が同時進行していて、近代文学を読んでいるような不思議な感覚の読書体験でした。登場する男たちのなんと情けないこと。その情けない男たちに「オマエニハ、ワカラン」と軽んじられている女たち。それでもそんな男たちを易々と乗り越えていく女たちに喝采です。100年前の恋愛も大変、ていうか気持ち悪い。
2020/05/16
myunclek
明治時代の女学生の自由恋愛と、その女学生に心奪われる中年の男性を描く当時物議を醸し出した田山花袋の「蒲団」。その物語の現代版が同時進行で描かれる。時代は変われど、公に出来ない恋愛の切なさよ。分かっているのに止まらない、男と女の不可思議な恋の道行。
2018/08/08
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