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イトウの恋

イトウの恋

イトウの恋

作家
中島京子
出版社
講談社
発売日
2005-03-01
ISBN
9784062127776
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イトウの恋 / 感想・レビュー

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ぶんこ

イザベラ・バードの本に想を得て書かれたとありました。 つくづく作家さんの創造力、想像力に感嘆しました。 明治初期に通訳となった祖先の手記と、2歳の時に自分を捨てて異国にはしった実母、そして手記を発見した中学校教師を絡めて話が進む構成が秀逸でした。 まるでドキュメンタリーを見ているかのごとく、具体的に頭に浮かんでいました。 I・Bの宗教観に根ざした崇高な人間性と、20歳そこそこのやんちゃなイトウの恋の部分が魅力的だっただけに、現在のイトウの娘の娘の娘であるシゲルの存在感がイマイチでした。

2015/12/14

taiko

明治維新前後の横浜に生きた通訳の少年イトウが、晩年回顧録として残した書付が見つかった。中学教師の久保は、途中で終わるその書付の続きを求めて曾孫であるシゲルに会いに行く。…あらすじを見た時に、あまり好きそうな話ではないかも、と思いつつ、著者の作品だからと手に取りました。その印象とは大いに違い、とても興味深く、面白い、いいお話でした。イザベラ・バードも伊藤鶴吉の名前も知りませんでしたが、ここから色々調べ、興味の対象となりました。これが読書の醍醐味。イザベラ・バードの日本奥地紀行もいつか読んでみようと思います。

2016/11/29

クリママ

明治初期、横浜港で英語を覚え、その後通訳として活躍したイトウ。若き日、イギリス人女性探検家I.B.の通訳となり旅に同行、そこで芽生えた恋。さえない中学校教師が屋根裏部屋の古いトランクの中で見つけた手記からその恋をたどる。中島京子のユーモア溢れる文で描かれた現代の部分。そして切なくも燃えたぎる恋心のつづられた手記。どちらもとても魅力的でページが少なくなるのが惜しい。深い余韻が残る、素敵な物語だった。

2017/06/09

きいち

現世での「進展」を、手記のなかのイトウとバードが引っ張っていくのがとても気持ち良くて、あっという間に読み進めてしまった。なんといってもシゲルと、そしてバードがかわいらしくて。◇イトウの気持ちは、確かにたぶん明治のものではないとは思うけれど、でも、今の目から見たときの(あってほしい)明治のふつうの青年の煩悶、近代人としての自分の気持ちに気づく瞬間。『坊ちゃんの時代』的に、とても素敵に描かれていく。◇そして、意図的ではないにしても、まこっちゃん、グッジョブ。不器用な現世人の進展には、彼の存在が必要なんだよね。

2015/07/20

紅香@本購入まであと9冊

『おまえは誰のようにもなる必要はない。おまえ自身の不可思議な人生を送るのだ』イトウという人物の生きた時間に触れて思う事はなんだろう。性別も年齢も役割も忘れる。そんな濁流に飲み込まれたら…暫く流されるのも悪くないとこの物語を読んで思った。胸に引っ掛かる言葉は少し前の自分なら素通りしてしまっていた。そんな思いを抱きしめてる私もまた不可思議な縁を紡いでここにいる一人だ。遥かなる先人達の希望の頂点に立っている。複雑な思いを背負って、でも堂々と。あなた達と同じように私も生きていると胸を張りたい気持ちで一杯になった。

2017/06/03

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