「別れる理由」が気になって
「別れる理由」が気になって / 感想・レビュー
フリウリ
小島信夫の「別れる理由」が気になって、読みました。江藤淳の評論を援用しつつ、十二年半に渡る連載と小説内部の時間軸を比較したり、メタフィクショナルな構造を解明するなかで、その本が「気になるわけ」が探求されていきます。「別れる理由」の読者は三人とも一人とも言われ、その評論など誰が読むのか、と坪内は書いていますが、とてもおもしろかったです。なお、方法と文体において先端的な小説は、どんな時代でも先端的だと思います。それらを追求しない「普通の小説」は、既存のそれらを借りて、ただ内容を置換しているだけだからです。8
2023/08/21
勝浩1958
読書の醍醐味が伝わってきたとともに、このように作品の隅々まで目が行き届く坪内氏の読む力の凄さに敬服しました。それでは、私はこの小島信夫著『別れる理由』を手に取ることがあるのだろうか。読んでみたい気がするものの、途中で挫折してしまいそうな予感もある。「ここを読み落としてはダメですよ。」といった坪内氏の的確なアドバイスがないと、この作品は味わい尽せないだろうな。でも、それは読書の楽しみを半減させるだろうか、やはり読者自身で自由に解釈すれば良いのだろうか。そんなことを考えるより、先ずは手に取ってみるか。
2014/04/27
アレカヤシ
(今や、かつてのように、夫は夫の、妻は妻の、父は父の、母は母の、教師は教師の、明確な役割を持つことは出来ない。皆、そのふりをしなければならない。そしてそのふりは、様々に交差していく。そのふりの中にあるリアリティを、永造は、いや、小島信夫は、説明したい。しかしそういう複雑なリアリティを説明するためには、とりとめもなく厖大な分量が必要である)219頁 こういった内容の為、かたちとしては(集約を拒否した方法)藤枝静男254頁 になっている、というのはわかりやすい解釈でした。しかし本を読むのは大変なことだなあ、
2020/01/19
もろろろ
まず、よりにもよって小島信夫の「別れる理由」の評論に手を付けたことに拍手したい(笑)。例の本を社会や文壇、文学におけるリアルタイムで起こったことあるいは対談、作者が参照したであろう理論、荒唐無稽な内容とを照らし合わせて、時代の停滞感や先鋭的ポストモダン文学への志向、森敦の「意味と変容」の実践ということを導いている。それにしても、あんなに読みにくい本なのにこの評論のドライブ感は気持ちいい。まるで「別れる理由」をネタに小説を書いたみたいだ、というところで坪内もこの小説の中に組み込まれてしまったのか!?
2010/12/19
yoyogi kazuo
面白くサクサク読めた。この本のおかげで、別れる理由という長大な小説自体を読む必要がなくなったので良かった。小島信夫という掴み所のない作家のおおよその輪郭もなんとなく分かった。現時点での結論は、文体と視座に見るべきものはあるが理屈に傾くとつまらないという評価。森敦の悪影響ではないか。
2021/05/27
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