方法叙説
方法叙説 / 感想・レビュー
踊る猫
実に(読んでいてヒヤヒヤしてしまうくらいに)率直な書き手だ。それは別の言い方をすれば確かに「きれいな自意識」を備えており、曲がったことやごまかしを許せず己の繊細さと知性を信じ続け、考え続ける姿勢から来るのだろう。そしてそれが怠惰なうぬぼれからくる「唯我独尊」に終わらず、その鋭利な知性を己自身に向けてストイックに考え続けているところも面白い。彼の仕事や彼のスタイル(つまり彼なりの「方法叙説」)はなかなか真似できない、実に堅牢に培われたものだということが伺える。自伝的な、彼自身のルーツが見える本として興味深い
2023/08/06
Bartleby
松浦寿輝と恩田陸との対談で恩田氏が触れていたので読んでみた。具体的な創作技術論ではもちろんない。松浦氏の創作方法論だ。詩人、小説家、映画批評家、フランス文学者といくつもの顔をもつ氏だが、それぞれの分野での仕事間の関係がよくわかって興味深い。そしてかなり意図的にその顔を使い分けていることもわかる。いずれにしても、終わりを設けて切断することなく、ずっとだらだらと書いていたいという欲望が底流している。なにかを主張するつもりはさらさらなく、ただ遊んでいたいという欲求も透かし見える。
2023/08/19
保山ひャン
詩人にして小説家、評論、エッセー、研究論文も書く松浦寿輝が、自作とその方法について書いた文章をまとめたのがこの1冊。とは言え、意味に着地することに違和感を呈する著者のことだから、単なる自作解説にはならない。小説風の文章を書いた直後に、批評家がいかにも言いそうなことを試験問題風に列挙するくだりもある。例えば第3問「この著者には、やはり『永遠』という言葉に焦点を合わせて西脇を論じた文章があるが、そこで提起されている『ポストモダン』や『歴史の不在』の概念を援用しつつ、この作品に内在するイデオロギーを批判せよ」!
2015/04/09
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