馬琴の嫁
馬琴の嫁 / 感想・レビュー
なゆ
予想に反して、あまりにあまりな苦難の嫁、みち…。この時代なら嫁は耐えて当然なのかもしれないが、私なら早々にブチ切れて暴れて飛び出すわ。そんな暗くなりがちな話も、群さんのさらっと淡々とした文章だからどうにか読めた。馬琴自体もクセのある頑固で難しい義父なのに、姑の百の気難しさと、何より許せんのは夫の宗伯!病がそうさせるのかもしれんけど、あのワガママさには閉口。いつ、みちは救われるのか…と思いながら読み終ったけど、みちはどう思ってたんだろう。何にせよ、みちがいなくては『里見八犬伝』は完成しなかったという事ね。
2016/12/09
onasu
群さんにこんなんがあったんだ。滝沢馬琴が最晩年、目が不自由になった折に代筆したという妻女。正確には、馬琴の嫡男の嫁:みち。 自由な家風の医者の家から、頑固で几帳面な家に嫁したが、夫は医者だが虚弱、姑は癇癪持ちで病がち、下女も長続きせず、まともに動けるのは老齢の馬琴とみちという、何ともな一家。 義姉妹は小姑根性、実家もごたごた続きで寄り付けない中、夫を看取り、長男を亡くし、馬琴が鬼籍に入った後も、もうひと騒動。 読んでいて楽しくなる著作ではないが、馬琴一家の暮らしぶりと、人生の機微に思いが馳せられた。
2016/06/15
あきまこ
群ようこさんはエッセイでよく拝見しておりました。このような時代物はとても新鮮に感じ、嫁業がどのように書かれているのか気になり、読みました。心情を深く掘り下げるという点ではあっさりしていましたが、ここまで病人の看病が続くと、心情云々はあっさりしていた方が暗く愚痴っぽくならずに良いかも知れないと思いました。時代が違うからか、「癇癪」の「癇性」というものがよくわからなかった。みちさんは勝ち気に書かれていますが、舅である馬琴に手をついて頭を下げる姿は、まさに日本の古いお手本のような女性だと思いました。
2016/08/11
橘 由芽
現在、世の中のお嫁さん達は昔と比較して、随分と地位向上し、虐げられていたこの小説の時代とはむしろ嫁と姑の立場は逆転しているかもしれません。昔のお嫁さんは義理の両親に口答えなんて毛頭許されず、どんなに理不尽なことを言われてもただただ「はい」としか言えないわけです。けれどもこの主人公みちは(これも馬琴の言いつけで改名を強いられた名前)苦労続きの人生ながら健気にひたすらに生きて、そして死んでいきます。愚痴ばかりの自分自身の人生を省みながら「まだまだ甘いな・・・」と。
2017/08/03
ヨコット
全編を通して看病続きで辛すぎる。最後にはきっと報われるのだろうと淡い期待を持って読んだが、まぁなんとささやかな事か。正に女は三界に家なし。時代と言ってしまえばそれまでだが、みちに安住の時はあったのだろうか。群さんの文体が、軽妙なのでスルスルと読めたが…。、
2016/05/28
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