カラスのジョンソン
カラスのジョンソン / 感想・レビュー
chimako
生きていくことは厳しい。雛のジョンソンを思わず保護した里津子も育てた陽一も、ジョンソン自身も。自分の立ち位置を受入れ、そこで生き残ることの何と切なく難しいことか。胸がざわざわするような生への喜びもある。これがきっと愛というものなのだと感じる瞬間もある。命の重みも尊さもそれとは知らずに背負うこともある。守りたいものをまもりきれなかった後悔と自責。ドリアン助川以前の明川哲也。『ピンザの島』を思い出す命の物語。かもめのジョナサンは飛ぶことこそが生きること。からすのジョンソンは舞い上がった天空から地へとはばたく。
2016/07/05
しいたけ
命の美しさ。生きることの哲学。守りたいものに出会う奇跡。それでも、すべてはやがて消滅するという掟。この世界の理不尽。「ナクナ。ナクナ、ナクナ、ナクナ。マモッテヤルカラ」。傷ついても、どうにもならなくても、死にたくなっても、強い風が吹く日には羽根を広げてくるんでやりたい。胸にズシンと届きました。これから好きな本を聞かれたら、この本の名をあげると思います。
2016/06/19
miww
読友さんに教えてもらって出会った本。一羽のカラスの一生と小学生陽一のお話。陽一母子に助けられカラスのジョンソン。その保護から羽ばたいた途端襲ってくる過酷な現実。命あるものの自然の営みを生き抜き味わう幸福と絶望、ジョンソンに襲いかかる出来事が辛くて悲しくて何度も涙した。子供、大人、カラスの立場で描かれる物語に生きる事の意味、人間の傲慢、理不尽な世の中の縮図が見える。ジョンソンが最期に放ったふたりをつないだ言葉「ナクナ、ナクナ、ナクナ、マモッテヤルカラ」。とてもいい作品でした。おすすめです。
2016/06/11
TANGO
図書館本。読友さんの感想にひかれて、手に取ってみた。寓話的でありながら、哲学的でもあり、カラスの物語でもあり、陽一の物語でもある。子の立場、親の立場、人の立場、カラスの立場。それぞれで、見えてくるものが違っていて、それでもこの世界で生きていくために、自分は何が出来るだろう、と考えさせられる。また読み返したい1冊。
2014/03/13
ちゃちゃ
自然との共生など所詮“キレイゴト”。カラスは駆除すべき害鳥。だが、母子家庭の里津子と陽一は、傷ついた瀕死の幼鳥を見捨てることができない。本作は、カラスのジョンソンと、ジョンソンを懸命に介抱した母と子の視点で、生き物の厳しく酷い現実が深く鋭く描かれる。「守るべきもの」を守り切れなかったことへの呵責。しかし、守ってもらった記憶は決して忘れ去られることはない。ジョンソンは最期の力を振り絞り、陽一を守るために飛び続けた。泣きじゃくる陽一は、きっと生き続ける。守ることが生きる希望に繋がることを、私たちは改めて知る。
2016/07/18
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