KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

最後の命

最後の命

最後の命

作家
中村文則
出版社
講談社
発売日
2007-06-12
ISBN
9784062139595
amazonで購入する

最後の命 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

青蓮

中村文則さんの作品はテーマはいつも重たくて息苦しいけれど、「悪とは何か?」を強烈に突きつける本作はよりヘヴィな気がします。少年時代に女性が襲われている場面を目撃してしまった「私」と冴木。それがトラウマとなって二人の精神を、人生を歪めていく。「私」と冴木のトラウマの発露の仕方は相反するものだけれど、根っこは同じ。二人は「異常な興奮状態」に身を置かないと生きている実感が得られないと言う事。冴木が語る「悪を感じない人間」「人間はどこまで悪になれるか」という言葉が胸に突き刺さる。冴木もある意味では被害者だと思う。

2016/12/22

れみ

少年時代、ある2つの事件を経験した主人公とその親友の冴木。疎遠になっていたふたりの再会から間もなく、主人公の部屋で女性の遺体が発見されるところから始まるお話。幼い頃、そして思春期の頃の出来事がきっかけで様々な葛藤を抱えるふたりの内面が描かれ、なんとも言えない胸の痛みを覚えて切なくやるせなくなる。そんななかで主人公が冴木や香里のような身近な人を思う気持ちに心惹かれる。

2019/04/07

めしいらず

幼少期に目撃した強姦が、その後の人生に影を落とす。一人はあの時恐怖に手をこまねいた自分の卑劣がトラウマになる。いま一人は卑劣な性交を嫌悪しながらも、力で他者の嬲る圧倒的な昂りに憧憬を覚える。表面は取り繕っても性の魔性は抗い難い。それは人らしさを束の間遮断するから。明瞭な意識で制御しないと社会から逸脱してしまう。互いの存在が抑制し合っていた均衡はある事件を境に崩壊する。そして時が経ち、偶然に引き寄せられた二人の運命は、更に悲しい顛末を辿る。だが友を気遣う心がぶつかり合う悲哀のラストの先、小さな救いが見えた。

2017/06/02

starbro

中村文則の未読の旧作7連続シリーズに続いて、中村文則全作品読破プロジェクトが始動しました。とは言っても既に10作品読んでいるので残り6作品です。今回は「最後の命」です。これで11/16.悪と性と狂気が本作のテーマでしょうか?性のめざめの頃に特殊な性体験をするとトラウマとして残り、アブノーマルな世界に入ってしまうのかも知れません。タイトルと内容がマッチしていない気もします。著者のあとがきがないのも寂しいかな。

2015/05/21

とろこ

久し振りにズシンときた。一般受けする数多の小説とは真逆をいく。嫌悪感を抱く読者さえいるかもしれない。作中で、冴木が、主人公に、「作家になれ。俺たちみたいな人間は書くなよ。感動する恋愛小説を書け」と言うところに皮肉を感じた。確かに、感動する恋愛小説は需要が多いだろう。現在の出版事情をみれば明らかだ。だが、中村文則氏にしか書けない文学を求める者も確かにいる。私がその一人だ。存在とは何か。悪とは、罪とは何か。生とは、死とは何か。孤独とは何か。それら普遍的なテーマに真正面から挑んでいる。

2017/08/22

感想・レビューをもっと見る