ピカルディーの三度
ピカルディーの三度 / 感想・レビュー
ごはん
背徳的な儀式によって繋がったふたりの関係は、どんなに多くの言葉を紡いでも儀式によって得た結びつき以上の精神的な繋がりを得ることはできない。羞恥を掻き立てられる刺激的な行為は快楽を与え、肉体的な欲望を満たしてくれるけれど、空虚なココロはそれによって埋まるどころか更なる侵食を続けるだろう。それでも必死で繋がりたいと思う気持があまりにも爽やかで、こんなに美しく澄んだ狂気をはじめてみた。秘密を共有する共犯者のような危うい関係も魅力的だけれど、好きだという飾らない言葉を真直ぐにぶつけ合える関係も素敵だと思う。
2009/09/11
耳クソ
表題作が優勝です。読んでいるあいだ心臓を盗られそうになったので何度か奪い返した。しかしやべえよな二〇〇七年って、小説が豊作すぎる。
2022/03/17
亜希
鹿島田さんは芥川賞受賞の『冥土めぐり』しか読んだことがなく、そちらが好みだったのでこれは2冊目。5編からなる短編集ですが、最初から最後まで見事なくらいに私には理解不能でした。表題作の題名と装丁の綺麗なムラサキ色は好きだけれど。スカトロ(って程では全然ないですが)や近親相姦を描くのであれば、どこまでもドン底まで描ききって欲しいと思ってしまう私には、面白さもわからず意味もわからず共感もできず…図書館本で良かったと思います。
2014/12/02
tomo*tin
どれも世間一般で言うところの「普通」とは形の違う「愛」を描いた五つの物語。しかし彼らにとってはこれが「普通」なのであり、これしか知らないのであり、これが最終形態なのだ。好き、愛してる、全部知りたい知ってほしい、あの人のものになりたい、ひとつになりたい。けれど別の個体であるからこその「愛」なのだ。個体は混ざらない混ざれない。感情は暴走する、着実に、冷静に。久々に、まっとうな変態、に出会った気がする。特に表題作、私は大好きです。
2010/05/28
多聞
様々な形態の愛を題材とした短編集。表題作は、「おれ」と「先生」のまさに排泄物で彩られた黄金色の同性愛を描いている。『こころ』に同性愛と排泄物を混入した感じだろうか。「おれ」の一人称で進行する表題作はどことなくコミカルであり、批評的でもある。批評的な要素は阿部和重の初期作品に通じるものがあり、面白い。他の収録作品では『俗悪なホテル』がよかった。
2011/10/21
感想・レビューをもっと見る