カソウスキの行方
カソウスキの行方 / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
やっぱり好きだなぁ、津村さんの作品が醸し出す雰囲気。特別何がっていうワケでもなく、ただ普通な感じに不思議と惹きつけられます。ありえない展開の話より、ごく普通の日常におけるひとコマをさりげなくサラッと、しかもリアルに淡々と書き綴る文章はココロにすっとなじんできます。やっぱり基本的には‘働く女性’が読むとよりいっそうココロにグッとくるのかもしれませんが、やはり津村さんの作品が持つ独特の雰囲気はぜひ幅広い読者層に味わってもらいたいです。読んでいて疲れない作風って、あるようで意外と少ない貴重な作家さんなのかなと。
2014/12/31
chimako
何だろう、この落ち着いた気持ち。最後は読み手であるこちらの口角が上がるような話の納め方。津村さんのこんなところにやられてしまう。またまたディテールが凝っていて意表をつかれる。表題作の森川の仕事先が雲南省って!上司の奥さんのパート先がスイス製のおもちゃを売ってるお店だとか。いちいち自分の中にはないものを見せられて感心してしまう。誰かを好きだと仮想して仕事に張りを持たせる……そこまでするか と思いながら乗っかってしまう自分を笑う。2話目のオサダの小説といい3話目の法則といい脱力感満載。好きです。
2016/01/19
なゆ
カソウスキ…なんか趣のある単語だと思ったら、〝仮想好き〟だったのね(^^;)けど、その発想が面白い。理不尽なことで本社から郊外の倉庫に飛ばされたイリエ。面白きこともなき今を面白くするために、本当は興味もない森川君を好きになったということに仮定して日々を過ごしてみる話。細かなエピソードの表現が楽しく、ひねた面白みが好き。そしてこのふたりの行方は…。他の2編も、なんとなく微妙な関係のふたりを描いていて、でもなんかいい方にいくんじゃないの~?って思わせてくれる読後感。うん、やっぱり津村さんはイイ。
2012/04/16
里季
いや、こんなにツボにはまった作家さんはいない。お仕事小説のスタイルはいつも通りだが、イリエに激しく共感してしまった。仕事は出来るがバリバリキャリアウーマンというタイプではなく、男子に興味もあるし独身主義者でもないが積極的に女子力をアピールしているとはお世辞にも言えない。愛想がなくてつっけんどん。そんなイリエが「好きになったということを仮定してみる」ことで鬱憤のたまる毎日を何とか盛り上げていこうとするところがよい。カソウスキの行方は予想通り盛り上がらないまま残念なことになるのであった。
2014/08/25
おかむー
ロシア語か何かと思った「カソウスキ」はなるほど「仮想好き」なのね。140p程度の軽いボリュームのうち約80pの表題作、『Everyday I Write A Book』が約40p、『花婿のハムラビ法典』が約20pとページが半減してゆく法則には何か意味があるのだろうか?。『可もなし不可もなし』。三作とも淡々とかつちょっとひねくれた女子的心情(『花婿…』は男性視点だが)が嫌味なく心地よい感触。でも見方を変えてみるとどれも自己完結な脇役からの視点と取れなくもないかな?さっくりと箸休め的読書にはオススメ
2014/10/14
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